第59話琴葉のお願い

 その後少しの間マユと雑談し、俺はそろそろご飯の時間が迫ってきたからとゲームからH・J・Oからログアウトしてマユとはまた明日遊ぶことになった。

 俺はご飯を食べるべく、リビングに向かう───と、リビングのテーブルの上には既に琴葉が作ったと思われるオムライスが置かれていた。


「今日はオムライスかー」


「うんー、そうだよー」


 琴葉がいつものように元気な声で返事をする。


「ねねっ、お兄ちゃん」


「どうした?」


「明日お買い物行こ!」


「えっ…」


 明日か…明日はいつも通り学校があるから買い物に行けるとしても早くて5時半から…明日はできるだけマユを不安にさせないためにできるだけ早くログインするつもりだったんだけど…どうするか。


「あ、明日は平日だし友達とかと遊んだりした方がいいんじゃないか?」


「え〜、たまにはお兄ちゃんと買い物行きたい〜」


「この前行っただろ?」


「もう結構前だもんっ!」


「ん〜…」


 明日は絶対にできるだけマユより早く待ち合わせ場所にいたい。

 マユは遅刻は絶対にしてこないからいつもの時間で大体7時…つまり5時半から出かけるとして、行き帰りの往復で30分と考えると1時間しか買い物できない。

 琴葉は買い物が長いから絶対にそれだけじゃ満足しない…


「もしかして前に話してたVRの人?まだ続いてるの?」


「…そうだ」


「へぇ〜、この前のるなちゃんは?」


「るなは単なる友達だ」


「…単なる友達、ね」


 琴葉はポケットからスマホを取り出して文字を打ち始めた。


「い、いきなりどうした…?」


「ううん、別になんでもないよー」


 琴葉は高速で文字を打つと、すぐにスマホをポケットに戻した。


「ん〜、じゃあ今日琴葉と一緒に寝てくれたらお買い物はお預けにしてあげる!」


「あのな、俺たちはもう高校生─────」


「お兄ちゃん、前も言ったけど兄弟は元々一つなんだから恥ずかしがらなくて良いんだよ?」


「は、は!?別に恥ずかしがってなんか────」


「じゃあ一緒に寝よ〜?」


「…わかった」


 ここで断ったら俺が本当に恥ずかしいみたいだ。それを認めることこそ恥ずかしいことだ、絶対にそこだけは譲れないな。

 譲ったら今後の兄の威厳に関わる。…まぁ、妹となら一緒に寝てもマユに対して後ろめたさを考える必要はないな、うん。


「やった〜!じゃあ何時ぐらいに寝る〜?」


「えっ…あぁー」


 今日は深夜にるなと遊ぶ約束をしている…


「し、深夜3時…?」


「ダメ!」


「えぇ…」


「お兄ちゃんの健康にも関わるし、最悪お兄ちゃんだけなら良いけど相手の人まで深夜に付き合わせる気?」


「そ、そうは言われてもな…」


 相手の人っていうのは琴葉も一応会ったことがあるるななんだけどな…それを言ったらるなとの出会いがVRだとバレてしまう。一応同じ学校だから誤魔化せるかもしれないけど琴葉の洞察力は侮ってはいけない。


「だからっ!遅くても相手の人と遊ぶのは深夜1時まで!…あ、私には気遣いとかいらないからどれだけ夜遅くでも一緒に遊んでも良いからね?」


 なんだそのご都合設定は。


「…わかった、深夜1時までだな」


「うん、もし1時になってもゲームしてたらお兄ちゃんの服脱がすからねっ!」


「わ、わかった、約束する」


 俺は深夜1時にはログアウトすることを約束してまだ深夜までは時間があるのでお風呂に入ることにした。

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