第17話可愛い一面

 今日のマユは情緒不安定だな…何か情緒不安定でも楽しめること…そうだ!


「マユ、防具とか買ってみないか?」


「防具…?」


「うん、もしかしたらまた今度クエストに行くことがあるかもしれないから防具とか買っておいた方がいいんじゃないかな〜って…」


 本当は防具が欲しいってわけじゃないけど、情緒不安定なマユの気分が紛れさたい。


「ん〜、私的には肌を隠せればいいんだけどなあ…え!?今もしかして今度クエストに行くことがあるかもしれないとか言ったの!?行かないよ!?もうあんな危険なところにマトくんを連れて行くわけには行かないもん!」


 肌を隠せればいいって、これ一応アクションゲームなんだけどな…


「聞いたところによるとなんかこのゲームには強制緊急クエストみたいなやつがあるらしいから、そうなった時防具がないと困ると思うし…」


「そっかぁ…じゃあ私の防具はいらないからマトくんの防具だけ買いに行こ?」


「え、買うならまずはマユからのだ」


 男の俺だけが防具を着て女性のマユが防具を着てないなんて、なんか嫌だ。ちょっと古臭い考えかもしれないけどなんか嫌だ。


「私はいらないよ!だって───はっ…」


 マユが防具をいらないと言った瞬間にいきなりはっとなって勢いあった口調が一気に沈黙に変わった。マ、マユは大丈夫なのか…?本当に情緒不安定だ…


「私やっぱり防具ほしい!」


「うん、じゃあ防具屋さんに───」


「私マトくんを装備する!」


「…な、何を言ってるんだ?」


「だから!マトくんを装備する!」


「……」


 本当に何を言ってるのかわからない。このゲームにはプレイヤーを折り畳んで防具にするなんていう機能はない。


「ぐ、具体的には何をするんだ…?」


「ん…?そのままだよ?マトくんを私にくっつけて…」


 そう言いながらマユは俺の両手を自分の腰を抱かせるように包ませた。


「マトくんの顔も私の横に持ってきて…」


 今度は俺の顔をマユの顔のすぐ横に移動させた。


「完成!これが最高の防具だよ!」


 これのどこが最高なんだ…動きづらいし剣も触れない。ただただ呪いだ。


「これじゃ動けないし、仮に攻撃された場合俺が全部攻撃を食うことになる…」


「はっ…」


 マユは地面に屈み込んだ。


「ごめんなさい…私マトくんを盾にするつもりなんかじゃなかったの…ただマトくんとくっつけながらゲームできるなんて最高だと思って…」


 今度はひどく落ち込み始めた。この短時間で一体どれだけ感情の変化が起きるんだ。


「いや、俺もそんな落ち込ませるつもりで言ったんじゃないから、気にしないでくれ…」


「…うん」


 マユは立ち上がって今度は元気よく言った。


「だから私がマトくんの防具になるね!」


「ならなくていい!」


 結局その後俺は防具を買いに行こうと防具屋さんに向かおうとしたが、マユが「私が防具になるから他の防具になんて浮気しないで!」と、散々ごねたため、防具を買うことはできなかった。…まあ、少し可愛い一面をみれた気がする。

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