うつつ


点滴の針を守る薄い膜

僕を守る厚い皮膜

薬液は 涙より澄んだ色をしている

内視鏡の 腸をのぼる

嗚咽のもれる 小さな違和感

「これは綺麗な方ですか」

「綺麗な腸をしているね」

問題ない 問題ない 悶 だ 居ない

脳を包む白い靄

鼓膜に張り付く白い靄

画面に映し出されるオレンジの空洞

指先の麻痺は心臓を目指して

まるで夢を見ているみたいに

「お薬が効いてきたみたいですね」

「採摘するよ」

すり減っていく違和感

あとはただ 眠るだけ 

ねむ るだけ

根 無 る だけ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る