犬系女子の好きな人

昼の猫

第1話    犬系女子の一目惚れ



高校2年、湊本みなもとせいは、割と申し分ない学生生活を送っていたと思う。


突然、真夏にやってきた転校生が来るまでは――













「初めまして!犬崎いぬさきはるといいます。花宮高校からこの学校、桜ケ丘高校に来ました。えー、趣味は盆栽集めです!よろしく!」



雲一つない晴天の日だった。

窓を開けるといくらか風が吹いてきて、涼しい初夏に、ある転校生がやってきた。


『犬崎 遥』


茶色でくせっ毛の髪をピンク色のピンでとめていて、八重歯のせいもあって、いかにも犬系女子、という感じだった。



 盆栽集めが趣味なのか、ちょっと変わってるな。



頬杖をつきながら、ぼーっと考えていた。



「はい、自己紹介は終わりです。じゃあ、湊本さんの隣の席に座ってね。」



高谷たかや先生が優しい声で自分の席の隣をさす。



「はい!」



元気よく答え、犬崎さんが椅子に座った。



「犬崎さん、よろしく。」



せっかく隣になったから、と声をかけてみる。


すると犬崎さんは、じっと自分の顔を見つめてきた。


「何かついてる?」


そう聞くと、犬崎さんは


「何でもない!」


とぶんぶんと首を振った。



「はい、授業始めますよー。」



犬崎さんにたいしての疑問も、高谷先生の声にかき消された。






               ※※※







「湊本さーん!」


「どうしたの?」



4時限目が終わって、昼休みに入ってすぐ、犬崎さんが話しかけてきた。



「話したいことがあるから、屋上に来てくれない?」


その瞬間、教室がざわっとなった。



それもそのはず、この学校の屋上で告白すると、その恋は必ず叶うという不思議なうわさがあるのだ。


自分が入学してきたときには既にあったので、かなり長いことこの学校の噂になっていると思う。


この流れだと、犬崎さんは私に告白しようとしている、とみんな考えるだろうが、犬崎さんが転校初日にこの噂を知る、ということはあまりないだろう。



「いいよ。」


なので、私は拒むことなく、屋上に行った。











「で、話って何?」



「私と付き合って!」



 …え!?


 犬崎さんは、もうこの噂知ってたの!?



「え、えっと…どうして?」



とにかく、理由を聞いてみる。



「一目惚れです!」



「そ、そうなんだ…」


返事、返事を言わなきゃ…



「えっと、私、あまり犬崎さんのこと、知らないし…」


「うん」


やんわり断ろうと思ったのだが、一言一言いうにつれ、犬崎さんの表情が暗くなっていく。


 うー、罪悪感が…!



「だから、もっと犬崎さんのこと知ってから答えを出したいんだけど…!」


そこまで言い切ると、犬崎さんの顔がパァァァァッと明るくなった。


「それって、もしかしたらokしてくれるってこと⁉」


笑顔で聞いてくる犬崎さんに、


「うん。」


と答える。


「じゃ、友達からよろしく、星ちゃん!」


「う、うん。…遥ちゃん、よろしく。」



すると遥ちゃんが、ぎゅっと抱き着いてきた。


 小型犬…、チワワっぽい。






しかし、あの噂が本当だと、私たちは付き合うことになるのか…?


 まぁ、そのことは後で考えよ。






                ***


まだ星ちゃんのツンデレ要素はないです。


すいません…
















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