世界の秘密と地獄のロード。

 まぁ、ジュニアの方がイケメンなので当然と言えば当然の帰結か。じょ⋯⋯女子言うてもみんな中1。ぜ⋯⋯全然悔しくなんかないんだからねっ。


 後はお父さん連中が酒を勧めてくること。二人とも未成年なんだってば。

子どもたちが多いのでそこそこ早い時間でお開きになり、ジュニアは俺の部屋に一泊することに。


 「なんや健と同じ部屋で一夜を過ごすとか、初めてやな。」

ちょっと!その言い方。でも確かに。俺は短期留学のせいで修学旅行も参加してないのでそう言う思い出は皆無だ。思えば野球部の遠征ばかりだったな。


「へんな言い方すんな。空いてる隣の部屋でも良いんだぜ。それにしてもライリーに気に入られるとは思わんかったわ。」

 例の一件で「男嫌い」だと思っていたライリーがジュニアにデレデレだったわけで少しびっくりもしたのだ。男嫌いではなく「東洋人アジアン嫌い」なだけなのね。


 俺からサラッと事情を説明されたジュニアも「へえ」と反応。

「いや、恋愛感情とかではないでしょ。周りの女の子に引っ張られただけかもよ。でも僕の親友マブダチってことで彼女の中で健の株が上がるなら、それはそれでいいんじゃない。」


「まあ、好かれる必要はないんだけど、嫌悪されるのは居心地が悪いんでね。⋯⋯それで話は変わるんだが。」

 俺が疑問だったのは今回のイベントでの物資のことだ。特にフードトラックに載せるタコ焼きの調理器具やらビールタンクなんて日本にしかないから購入したらエライことになるし、レンタルしてもそれを移動するだけで莫大なカネがかかるのだが、どうしたのかということだ。


「あー。親父ケントは自分と健で考えた方法だって言ってたよ。前世で囚われの亜美をたすけに行った方法だって。


 僕の収納魔法に親父をリンクさせて簡易『転送』魔法に仕立てたんだよ。」


 マジか。つまりアメリカにいるジュニアの収納魔法に日本にいるケントがアクセスし、日本からの物資を直接アメリカに送り込んだのだ。


「だから親父が日本に着いたら今度は逆に親父の収納魔法を通して日本に返送するってわけ。」

「それ密輸やんけ。」

「ま、持ち込むくらいなら犯罪にはならんよ。売るなら別だけどな。」


いや、冗談ぬきで俺もその方法使いたいなぁ。

「うーん。僕と親父は親子だからリンクできるけど健とは無理だな。」

そうだよなぁ。

「でも、亜美とならできると思うよ。⋯⋯家族になればね。」

そっか。前世の時に俺が亜美の収納魔法にアクセスできたのは恋人同士だったから。


「でも今はできないけどなんでなんだろ?」

「それは健がまだ亜美としてないからさ。『実質的に』夫婦関係になれば良いのに。」

なるほど。⋯⋯って亜美とエッチせい、ということかいな。


「せやで。次に会ったらさっさとやることやれよ。恋人同士なんだから。」

「そう簡単に言うな。⋯⋯もう寝るぞ。睡眠魔法スリープかけてやるから。6時半に自動的に目が覚めるから二度寝すんなよ。」


 翌日、学校がある子どもたちに合わせて少し早めの朝食。別れぎわライリーはか細い声でジュニアに対して

「また、遊びに来てください。」

と間違いなく社交辞令ではないトーンで言っていた。ジュニアは


「うん。また連れてきてもらうわ。僕の親友ベストフレンドにいつもよくしてくれてありがとうね。良いやつだからよかったらこれからも面倒を見てあげて。」

と返す。以降、ライリーの俺に対する態度は「嫌悪」から少し改善。「尊敬」されないまでも「尊重」くらいにはなった模様。距離感はさほど変わらないけど居心地は格段に改善された。


 ジュニアにまた会えるかどうかは俺に対する態度次第だぞ、というニュアンスを理解できるんだから基本的に「賢い」子なんだよな。


 明日の火曜日からはまた遠征。しかもリーグの中で最も遠いフロリダのジャクソンビルだからノンストップで行っても6時間。当然合間に休憩が入るから片道8時間コース。しかも時差があるので時計の上では9時間。ただ現地で宿泊なので、3日間往復する片道3時間のチームとどちらが楽とも言えない。地区が違うので半期に一度くらいしか対戦がないのがせめてもの救いだ。


 ジュニアも飛行機で半日なんてこともざらにあるそうだから狭い日本が懐かしいらしい。まだ卒業して3ヶ月やん。


 とりあえず今日はジュニアをホテルに送ってから球場へ。チーム練習とトレーニング。前泊はできないので夜遅くの出発になる。だから一旦帰宅。夕飯を終え、夜10時に集合。


いざ地獄の遠征ロードへ。


 

 


 

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