第13話 好きだから-13


 そんな会話をしている間に男は右手にアイスピックのようなものを持っていました。危ないと思った瞬間には、突き掛かってきました。友崎君は私をかばったため、ピックが帽子をかすめました。

 あっと思ったとき、帽子と、それと信じられないことに、髪が、いえ、かつらが落ちていたのです。そして、振り返ってみた友崎君の髪は、纏められた長い髪で、その顔は、紛れもなく女の子だったのです。友崎君は、微笑みながら私を見ると、ヘアピンを取り長い髪をなびかせました。そうです、眼鏡こそありませんが、クラブで見たあの女の人が、友崎君だったのです。

「ばれちゃったわね」

 急に女言葉になった友崎君に驚いてしまい、もういまこの目の前にいる彼女から目が離せなくなりました。

「説明はあとでね」

 そう言うと、友崎君(さん?)は目の前の男を軽く殴り飛ばしました。男は悶絶して植木に倒れ込みました。後ろから飛び掛かってきた2人も、軽くいなすと、一人は回し蹴りで倒し、もう一人も、友崎君(さん)の倍くらい大きな人を軽く担ぎ上げ、投げ飛ばしました。まだ、呻いている人たちを一撃づつ殴ると完全にノックアウトしてしまいました。


 友崎君(さん)は振り返ると、すぐに私の手を取って駆け出しました。私たちはそのまま緑道を走り抜けました。

 広い道を渡ってしまうと、友崎君(さん)は微笑みながら私の方に向きながら眼鏡を掛けました。

「こういうこと、なの」

 私はまだよくわからなかったので、ただ、ただ見つめるばかりでした。

「実はね」そう言いながら、友崎君(さん)は話し出したのです。



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