最強魔法使い、パーティを組む。②

「へー。じゃあ、ジンは国立魔導師団員なんだ」

「元だけどな。魔導書を見つけて戻るつもりだから未来のでもあるけど」


 ニコルと食事をしながらいろいろな話をした。


 どうやら、ニコルは同い年で俺と同じように孤児院出身らしい。

 昔孤児院で読んでもらった本や友人とやったごっこ遊びなど、共通の話題が多かった。


 それに、ニコルが聞き上手だから色々と話してしまった。

 その流れで、いまの俺の境遇とかも話してしまった。


 少し不安だったが、ニコルは俺が国立魔導師団にいたことを言っても態度は変わらなかった。

 少し驚いてはいたけど。


「うん。ジンならきっとできるよ」


 ニコルにそう言われるとほんとにできる気がしてくるから不思議だ。


 俺は体の力が抜けていくような気がした。

 そうなってやっと体中に変に力が入っていたことに気づいた。

 やっぱり自分でも無理だと思っていたのかもしれない。


 本当にニコルに会えて良かった。


「ありがとう。ニコルはこれまでどうしてたんだ?」

「……」


 気が抜けたからだろう。

 思わず、ニコルのことを聞いてしまった。


 すると、ニコルの顔が曇る。


 俺はしまったと思った。

 何もないのに盗掘屋なんてやってるはずがない。


 きっと、これまでのことを話すのはニコルにとっては辛いことなんだろう。


「あ、言いたくないならーー」

「大丈夫。大した理由じゃないから」


 そうして、ニコルは盗掘屋になった理由を話してくれた。


 ニコルは一ヶ月くらい前までは普通にパーティを組んで探索していたらしい。

 ただ、孤児院に仕送りをしたりするため、少しでも見入りのいいパーティに入ろうとした結果、浅層を探索するパーティで荷物持ちのようなことをすることにした。


 最下層で探索するより浅層で荷物持ちをしていた方が儲かるんだよな。


 そして、二ヶ月前にあるパーティに参加した。

 探索自体は問題なかったんだが、そのパーティで窃盗事件が発生した。

 パーティの雰囲気が最悪になっていく中で、ニコルはそのパーティのリーダーが窃盗行為をしている場面を目撃してしまった。


 焦ったリーダーはあろうことか、窃盗の罪をニコルになすりつけたのだ。


「ひどいな」

「本当にね。私はリーダーがやったんだと言ったけど、パーティのメンバーはリーダーの方を信じた。私が加入した直後くらいから窃盗事件が始まったしね」


 証拠は不十分だったので、ギルドには報告されなかったが、パーティを脱退させられた上に窃盗の事件の補填をさせられた。

 本当に戦闘しているパーティメンバーほどの実力がなかったニコルはそれを払うしかなかったそうだ。


 しかも、その補填金が相当な額で、ニコルは借金をすることになった。

 借金を返すまではこの街から出ることはできない。


 仕方ないからパーティを組んで探索をしようとしたところ、誰もパーティを組んでくれなくなった。

 どうやら、そのパーティリーダーはニコルが窃盗犯であると触れ回ったらしい。

 大方、自分の罪がバレないようにするためだったんだろう。


 ニコルは仕方なく一人で盗掘屋をやっていたらしい。


 本当にひどい話だ。


 ニコルはこんなにいいやつなのに、誰ともパーティを組めないなんて。


「……もしよかったら。俺とパーティを組まないか?」

「え?」


 俺は少し考えた後、そう提案んした。

 ニコルは驚いた顔をする。


 だが、驚くほどのことでもないと思う。

 俺はパーティが組めない。

 ニコルもパーティが組めない。


 じゃあ、二人でパーティを組もうとなるのは当然の流れだ。


「ニコルも気付いてると思うけど俺は誰か一緒にいないと迷子になってダンジョンをまともに探索できないんだ。でも、国立魔導師団員だったせいで誰もパーティを組んでくれないんだよ。だから、もし、ニコルがいいなら一緒にダンジョンに潜って欲しい」


 ニコルは相当驚いている様子だ。

 もしかしたら、誰かからパーティに誘われるのは初めてなのかもしれない。


「でも、私は窃盗犯って言われてるんだよ?」

「嘘なんだろ?」


 ニコルとは色々話をした。

 そのリーダーがどういうやつかは知らないが、ニコルとそいつのどっちを信じるかと言われたら俺はニコルを信じる。


 騙されたらその時はその時だ。


「でもでも、たいして役に立たないよ?」

「俺が身体強化魔法をかければ中層で戦えるんだから問題ないよ」


 俺は中層を潜るつもりだ。

 ニコルは今日中層のモンスターを難なく倒してしまっている。

 全然問題ないだろ。


 それでも、ニコルは踏ん切りがつかないようだ。


 俺はニコルとパーティを組みたいと思っている。

 ニコルは話しやすいし、一緒にいてほっとする。


「迷惑にならない?」

「むしろいてくれないと困る」


 ニコルは不安そうに俺の方を見る。

 俺は真っ直ぐにニコルを見返して、正直な気持ちを伝えた。


「じゃあ、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく」


 俺たちは握手を交わす。

 こうして、俺たちはパーティになった。

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