第18話 自動強化スキル・連鎖構の突破口
「【
自分が戦わずとも、他人から経験値の一部を巻き上げることで勝手に強くなっていくという仕組み。
人の経験値を得ることで、他人よりもすさまじい速度で成長できる理屈は理解できた。こんなの、チートじゃあないか。
「我がファミリー【
「とはいえ、あんた。自分より弱いレベルの奴らが集めた経験値の一部なんぞ、さほど自身の強化に繋がるとは思えないんだが?」
「問題はない。私のスキルによって生み出された学習装置をつければ、得る経験値は約二倍弱だからな。個人の能力を最大限に引き出し、自身のレベル以上の実力を発揮させることのできるこの道具さえあれば、私は止まることをしらない」
「そりゃあなかなかの品物らしいな。なら、それが壊れちまうとどうなるよ?」
「知ってどうする!」
拳が飛んでくる。すかさず横へ体をずらし、真横すれすれで通り過ぎる。
「そんなの杞憂に過ぎないということ」
目を疑いそうになるような速さでの攻撃。一発くらいどこかに当たってもおかしくない。攻撃が続けば続くほど、避けるのが難しくなる。指が体を掠ったり、些細な攻撃がじわじわと体を蝕んでいく。
「八ツ橋、【
「今の一撃は、かなり入ったらしいな。それ以上抵抗する必要はあるまい。素直に負けを認め、私のサンドバックとなるといい」
間髪を容れずに拳が振るわれていては、体勢を立て直すのが厳しい。正直、抜き差しならない状況である。剣すら抜けていない。
いったい、どうやって乗り切ればいい?
「こ、ここは自分がぁ!」
「日向?」
これまで後ろでただ見守るしかなかったはずの日向が、いきなりどうしたというんだ。
「誰だ、先にぶちのめされたいか?」
「も、もう背に腹は変えられないんだ。【
「どうした、今さらおかしくでもなっ……?」
「まさか、これは」
固かったはずの地面が、ゆっくりと溶けていく。呆気にとられている隙を見て、すぐに距離をとって【竜人融合】を解いた。
「乗るぞ」
八ツ橋と日向を乗せて、上空へ。
「これしきのもので、倒れるような私ではないはずだ、そのはずなのに」
「日向、あんたどういう能力なんだ?」
「つ、土魔法です。本当はあまり使いたくないんですが。なんせ、一回使ってしまうと、気を、失ってしまって、魔法が切れるから……」
瞳が徐々に閉じられていく。今のうちに、あの学習装置を壊さなくては。無理があるが、やるしかない。
「いざッ!」
鞍の上に乗ったのち、剣を抜く。
竜の上から飛び降り、狙うはやつの装置。
「砕けろ、学習装置」
頭と装置の間に剣を入れ、装置を上へ持ち上げる。ボスの方を使って跳躍し、竜の上に飛び乗ってすぐ、剣で一閃する。
「私の、学習装置が……」
日向の意識はここで薄れ、足場は元の状態へと戻っていった。
「勝った、のか?」
ぬかるみがなくなり、ボスは危機から逃れた。
「これで終わりだ」
再度【竜人融合】をしたのち、剣を首元に突きつける。
「負けた、私の負けだ……」
しばらく動かずにいたのち、そっと剣を離したが抵抗されることはなかった。
「本当にいいのか?」
「いいのさ。いまさら負けた戦いに文句をいうつもりはない。そして何より。ここを見るといい」
「なんだ」
彼の手元に目を凝らすと、少しずつ学習装置が浮かび上がってくる。
「私のスキルは、一度壊されたくらいでは何の支障もないということよ」
「せっかく壊したのも無駄足だったとでも」
「別にそんなことをいいたいわけじゃない。しかしだ。学習装置を使っていて、相当なレベルになっていたはずなのに…… どうして竜騎士、君は攻撃をかわすことができた? 反射神経の良さではどうにもならないところがあるはずだが」
「負けないように力を振り絞ったら勝てた、というだけだ。特に変なトリックなどひとつも使っていない、ただの
【
この戦いの結果を見るに、俺は奴よりも早いスピードで成長できていると考えてもよいのかもしれない。
「それで
「あんたの組織はどのくらいの規模なんだ」
「ざっと数百といったところだろうかな」
思ったより大きい。利用価値はあるとみていいだろう。
「俺たちが困ったときは、あんたの"家族"の一員を通じて協力する、というのはどうだ」
「いいだろう。とはいえ、低階層にしか【
「問題ない。あんたがバックにいるというだけでありがたいものだ」
「そういえば、名をきいていなかったな」
「俺は……リュウジ」
「私は心優です」
「ぼ、僕は日向です!」
「ありがとう。私は、そうだな……
その言葉を最後に、やつはダンジョンの奥へと消え去ってしまった。
「あ、あの」
「日向さん、どうした」
「僕、自信が沸きました! もっと、もっと強くなれる気がしました! 本当に、ありがとうございました」
「いや、別に俺は何もしちゃいないさ」
「まさかあのボスを倒すだなんて…… 尊敬ものですよ!」
褒められるのはどうもなれない。
「おうよ」
「僕は、これで失礼します。またいつか、機会があれば!」
日向も、いなくなってしまった。あの土魔法がなければ、俺たちは危なかった。その感謝を、伝え忘れてしまったな。
「赤城くん、大人相手だと偉そうなんだね」
「強がってるだけだ」
「ちょっとだけ、鼻につくかも」
「どこかだよ?」
そういうと、なぜか八ツ橋は笑った。
「うんうん、なんでもない」
「なら、いいか」
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