神竜王のダンジョン探索〜平凡な俺がスキル【早熟】で最強の竜騎士に。モンスターをサクサク狩れるので、俺だけレベルが上がりまくるようです。〜
まちかぜ レオン
第1話 兄の死と予言
日が暮れた頃、俺はダンジョン支部へと向かっていた。
兄さんがダンジョンに潜ってから、三日も帰ってきていないのだ。
「ダンジョン支部」とは、ダンジョンに隣接した施設だ。探索師────ダンジョンに潜りモンスターと戦う者のこと────の情報を管理している組織だ。
俺の中では、嫌な予感が渦巻いていた。
探索師は、死と隣り合わせの危険な仕事。探索中に死ぬケースは、少なくないからだ。
俺は支部に入るやいなや、受付まで走った。
「受付嬢さん! 兄さんは、兄さん無事ですか。もう三日も帰っていないんだ」
「急に言われましても……いったん落ち着いてください。まずはあなたの名前をうかがってもいいですか」
気持ちを前面に押し出してしまった。
つい不親切な言い方になってしまった。
「
「少々お待ちください」
受付嬢は、背後の本棚へと歩いていく。
病院の診察室のように、いくつものファイルが挟まっていた。
目的のファイルを取り出し、パラパラとページをめくっている。
途中で手が止まると、別の棚から袋を取り出して戻ってきた。
「あなたのお兄様は────残念ながら、亡くなられました」
「まさか、何かの冗談ですよね」
「第三層の最深部で襲われたそうで。職員が救出に駆け付けたときには、首から上がなくなっていたようです」
彼女はデスクの上に置かれた袋をつまみ、カウンターの上に差し出した。
「手首についていた【ステータスバンド】の情報を見てもらえばわかると思いますが、赤城王牙さんであるのは間違いありません」
「本当に、死んでしまったのか……」
深呼吸する。探索師がダンジョンの中で死ぬことなんて、よくある話だ。
それが、俺の唯一の身寄りである兄さんだっただけだ。
「こちらが遺留品です」
「どうも」
密閉されたビニールの中に、兄の形見となるであろうものが入っていた。
気持ちが、溢れ出しそうになる。
「心中お察しします。まだ気持ちの整理がついていないとは思いますが……」
この場にいるのが、つらい。
そう認識したときには、すでに俺は走り出していた。
「あの、まだ話は終わって……」
自動ドアが開く。とにかく、ここから出たかった。
外は、ひどい雨だった。体を容赦なく叩きつけてくる。
「ちくしょう、ちくしょう……」
俺は、ダンジョンの存在自体が許せなくなった。。兄さんを殺した、ダンジョンという存在が。
ダンジョンが世界に現れてから、すべて変わっちまったんだ。
ダンジョンさえなければ、兄さんは職を失わずに済んだ。
ダンジョンさえなければ、兄さんは死なずに済んだ。
頼りになるのは兄さんだけだった。それなのに。
「くそッ!!」
ダンジョンを無に返せるだけの、力が欲しいと思った。
大事な人を殺した人間を恨むのと同じように、俺はダンジョンが憎いと思った。
膝からガクリと崩れ落ちた。俺は天を仰いだ。
地面を拳で何度も殴りつける。兄さんがもう帰ってこないと思うと、やるせなかった。
『汝、竜の力はほしいか?』
頭の中に流れ込む、見知らぬ女の声。
甘く囁きかけ、俺を誘惑してきそうな、怪しい声だ。聞き間違えだろうか。
『汝、兄の復活を望むか。兄を死に至らせたダンジョンを憎むか』
「兄さんの復活を望む。そして、俺はダンジョンを憎んでいる」
『ならば、今すぐ舞風ダンジョンの第三層へと迎え。私は、第三層最深部にて待っっている。その前に、兄の遺留品を見たまえ汝こそ、次なる王の器にふさわしいとみた。汝の正しい決断を待っている』
「おい、どういうことだ。教えてくれ」
そんな俺の願いには答えてくれなかった。幻聴が、消えていく。
「兄の遺留品の中に、何か手がかりが……」
手当たり次第探していく中で、俺は紫色に光る水晶を見つけた。
よく見ると、文字が刻まれている。
「なんだ……『汝、復讐を果たさんとする者。竜の力を第三層最深部に求めよ』」
信じてみるのも悪くない。俺は、踵を返した。
──────────────────
あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
おもしろい! と思ったら、ブクマや★をじゃんじゃんしてもらえるとうれしいです!
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