第5話 人間との遭遇
洞窟の中を探索していたら足音が聞こえて来た。
足音は少しずつ音が大きくなって来ていて、明らかにこちらに向かって来ていることがわかった。
俺は洞窟内の岩に隠れ、足音がこちらに来るのを岩の隙間から見ていた。
すると、少しずつ姿が見えて来た。
足音の正体は人間の女性だった。安心した俺は人間か!と思いそっちの方に飛んでいったその瞬間
きゃぁぁぁぁ!
女性が悲鳴を上げた。
女性の急な悲鳴に驚いた俺は、つい叫んでしまった。
その途端
《スキルアビリティ 超音波 発動しました。》
超音波で女性を倒してしまった。女性は何をしても動かない。
転生してコウモリになったからとは言え、元人間の俺からしたら、罪悪感しか感じられなくなった。
この女性に俺がしてあげられる最大限のことは何か必死に考えた。
その結果、自分の中だけでも生きていける様にしてあげたいと思いスキルで吸収する事にした。
名前も知らない女性さん。ごめんなさい。どうか安らかに。
《スキルアビリティ 吸収 発動しますか?》
イエス。
俺はスキルの危険性を知った。無抵抗の人間を叫ぶだけで殺してしまうなんて恐ろしい。スキルを操りきれてない自分が怖くなった。
《吸収によりスキルアビリティ 変身を取得しますか?》
イエス。
《スキルアビリティ 変身 取得・・・取得しました。》
吸収が終わると、俺は体が慣れていないのかとてつもない眠気に襲われた。
このまま寝てしまったら危険だという事は充分わかっていたが、どうしても眠気に勝てず、そのまま眠りに入ってしまった。
目が覚めると、俺は人間の手のひらにいた。人間を殺したコウモリへの復讐でもされるのかと思っていたら、人間は俺に話かけて来た。
「あなたサヤの事食べたでしょ。洞窟の中にいた女の子。」
あの洞窟にいた女性はサヤというらしい。
俺は何と返事をすればいいかわからず黙り込んでしまった。
ただただ申し訳なさだけが残った。
「まあ、いいわ。あの子病気持ってて、余命も宣告されてたの。だからあなたの中で生きていけるのならあの子も嬉しいと思っているはずよ。」
俺は女性の言葉に涙が出て来た。人間を殺したコウモリにかける言葉としてはもったいないくらい優しい言葉に感じた。
「あなた、サヤに変身できるんじゃない?ちょっと変身してみてよ。」
ルビ!サヤに変身できるか?
《スキルアビリティ 変身 発動しますか?》
頼む。
俺はあっという間に女性(サヤ)に変身した。
変身すると、人間の言葉を話せる様になり、この女性とも会話できる様になった。
俺はまず女性に謝罪をした。
そうすると、女性は自分の事を話してくれた。
この女性はモリィという名前らしい。サヤとは友人だったそうだ。モリィは人間の世界でスキルを学ぶために師匠と練習をしている未来の冒険者だそうだ。
俺は元人間ということもあり、この体に慣れるまで、一切時間が掛からなかった。
そしてモリィの誘いで人間の街に行ってみる事にしたのだった。
《今回の取得スキル》
変身・・・指定した物体にのみ変身することができる。
指定するものは、はっきりとした形を想像できている、スキルで吸収をしたものまたは視界にあるもの、どれかを満たしていなければいけない。
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