まおうとゆうしゃ
ム月 北斗
第1話 魔王(レベル50)と勇者(レベル99) 1
とある国にて、国王に「カジノで一生遊んでバニーちゃんとイチャイチャ出来るようにしてあげるから王位譲って?」と申し出たところ「ま?!」と即断し国王の座についてから半年、魔王(国王)は平和な時間を過ごしていた。
毎日決まった時間に食事が出て、国王としての職務を全うし暖かいベッドで眠る、そんな幸せを教授していたある日のこと、巷で勇者なるものが城へ向かっているとの噂が耳に入った。
魔王は部下の魔物を一人呼び出し変化の魔法を掛け城の騎士の姿に変えると「勇者を見つけ連れてこい。もし連れてくる途中で機会があれば殺せ、その時はお前を俺の右腕にしてやろう。」それを聞いた魔物は意気揚々と勇者を探しに行くのでした。
それから二日後のこと。
城内が妙にやかましい。衛兵の一人が慌てた様子でやって来たがあまりにも衝撃的だったのか口が回らない。ほどなくして玉座に座る俺様の足下へ向かってボロ雑巾のようにされた魔物が飛んできた。飛んできた方に目を向けると、そこにはひとりの剣士が立っていた。やっと落ち着いた衛兵が声を上げる、「国王様!勇者様が魔物を倒し城にお越しになられました!!」…ほぅ、こいつが勇者か。
もう一度俺様は剣士を見た。確かに勇者っぽい青い服を着てる、見た感じでわかる聖剣っぽいのも持ってる、が…眼が…すげー据わってんだけど?しばらく休まずに働きっぱなしの社会人ばりに据わってんだけど?
(ま…魔王様…)仰向けに倒れている魔物がわずかな魔力を使って念を飛ばしてきた。む?念話できるくらいの力は残ってたか、どうしたいったい何があった?魔物とは目を合わせないように勇者の方を見ながら念で会話を始めた。
(こいつ…人間じゃねぇです…)唐突な言葉に驚く。どういうことだ?(魔王様からの勅命を受けて探しに出た当日の深夜に山の中で野宿してる勇者を見つけたんです…そんで奇襲を掛けたんですが…)ふむ、不意打ちの通じぬ相手だったと。(いえ、あいつには一発いいのをくれてやったんです…)ン?それならなぜ返り討ちに?問いただすと魔物はおずおずと答えた。(あいつ…1ターンに8回も行動しやがったんです…)
ほぉ…はい?1ターンに8回?!すげーなオイ!!俺様でも頑張って3回だぞ⁉
(それでその8回の行動であいつは自分の攻撃力を上げて気づいたら俺はボコボコにされてました…)えぇ…すご…今の勇者ってそんなこと出来るの…。
「あの…」透き通るような低音ボイスが静かな玉座の間に響く。しびれを切らした勇者だ。なんだ?まさか!俺様が魔王であることに気付いたとでもいうのか?!
「その魔物に魔王はどこにいるか問い質したのですが答えずここまで連れてきてしまいました。なのでまだ息があるのであまり近くにいられると危険です。王様もう少し離れていただければ、と。」諭すように声を掛けてきた、こいつこっちに投げたのおめーだろうが…。「かまわん。手負いの魔物ごときに後れを取るほど老いてはおらぬ。」それっぽい感じの返答をすると勇者は過ぎたことを謝罪するかのように頭を下げた。(魔王様…私に…チャンスを…)時がたち魔物が若干の体力を回復できたのか念話で懇願してきた、いいだろう、勇者がどれほどの力を持っているかこの目で見たいからな。俺様は倒れている魔物にバレないように魔力を与え回復してやった、一瞬で
立ち上がり勇者に魔物は飛び掛かった、「死ねえええ!!勇者あああ!!」
見切ったものは何人いただろうか。俺様の警護に就いていた騎士団長は目を丸くしているしおそらくいないだろう、俺様を除いて。魔物の言うとおりだった、勇者は飛び掛かってきた魔物に炎の魔法を2発、自身にバフを4回、一度に複数回斬り付ける技を2回叩き込み、空中で私の最初の魔物の部下が死んだ。
ふぅ…、俺様は一息つくと玉座に腰を落とし考えた。(俺…勝てんのかなぁ…)
まおうとゆうしゃ ム月 北斗 @mutsuki_hokuto
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