でいず

第1話 うなじのきおく

ぼくはようちえんでひとりでいるのがすきだ

ともだちがいっしょにあそぼっていえばあそぶけど

いわれなければあそばない

えんていのひのあたるばしょや

そこにうつるいろいろなかげ

こんちゅうはなくさいし

あめのひのやねのしづく

かぜのひのはっぱ

おへやのひかるはさみやてーぷのかがやき

たくさんのおりがみとくれよんのいろ

しろいかみ

いろんなものがみえて

ぼくはひとりでもたいくつしない

ぼくがひとりでいると

せんせいがぼくにやさしくしてくれる

ぼくをぎゅっってしてくれる

ぼくはせんせいのかみのけのをさわるのがすき

くびのうしろからゆっくりかみをひっぱる

くるくるとゆびをまわしなふがら

さいごまでいったらまたはじめから

それをなんどもくりかえす

おひるねのじかん

ぼくはなかなかねむれない

ずっとめをあけていると

せんせいがぼくのとなりにきてとんとんしてくれるから

ばくはせんせいのかみをさわる

まいにちさわる

こないだ

ずっとめをあけていたら

すこしむこうにねていたまーくんがこっそりおふとんからでて

ぼくのとなりでねていたかずくんのおふとんのなかにはいってきた

かずくんおきて

かずくんをおこしていた

でもそのこえにきづいたせんせいが

まーくんをしかって

まーくんはじぶんのおふとんにもどっていった

ばかだな・・・まーくんは

ぼくなら

かずくんとならんでずっとしずかにおふとんにはいってるのに

かずくんはむこうをむいてねてるから

ぼくにはかずくんのかみのけがみえる

ちょっとてをのばせば

かずくんのかみにてがとどく

さわってみようかな・・・

そうおもったとき

せんせいがぼくのとなりにきて

とんとんをはじめたから

ぼくはせんせいのかみのけをいつもどおりさわった

それから

ぼくはかずくんのかみのけにさわりたくなった

こないださわれなかったから

どうしてもさわってみたい

ぼくはかずくんにかみのけにさわりたいとおねがいした

そしたら

かずくんはぼくに

あっかんべーをして

まーくんのところにはしっていった

それをみていたせんせいが

おおきなこえでとおくのかずくんをしかって

ぼくをぎゅってしてくれたから

ぼくはまたせんせいのかみをさわった

それから

なんにちもすぎてから

かずくんがぼくのところにきた

いつもいっしょのまーくんはいなくて

かずくんひとりだった

ねえ、さとちゃん

さとちゃんっていつもせんせいのかみのけさわってるよね

どうして？

かずくんがきいてきた

どうしてっていわれてもぼくにはわからない

だまっていたら

かずくんが

ぼくのかみもさわりたい？っていったから

ぼくはすぐにうんっていった

いいよ

かずくんがそういってくれたから

ぼくはかずくんのくびのうしろにてをまわして

かみのけをさわった

やわらかくてきもちいい

かずくんは

くすぐったーいっていってわらった

つぎのひ

かずくんがぼうずになっていた

まーくんもいっしょに

しょうがっこうにいったら

やきゅうのちーむにはいるんだって

いまからもうちーむでいっしょにれんしゅうするんだって

かずくんとまーくんは

みんなからあたまをさわられる

せんせいもかずくんのあたまをなでる

かずくんがぼくのほうをみて

さとちゃんもさわる？ってきいてくれたけど

ぼくはううんってくびをふった

だってさわったら

こないださわったかずくんのかみのけを

わすれたしまいそうだったから

かずくんはすこしわらってまーくんといっしょにむこうへいった

えんていをはしるかずくん

かくれんぼをするかずくん

むしをこわがるかずくん

はなをつむかずくん

いしをひろうかずくん

あめのひはつまらないというかずくん

かぜのひはおばけがでるというかずくん

はさみでかみをきるかずくん

てーぷでとめるかずくん

おりがみをするかずくん

えをかくかずくん

まーくんとあそぶかずくん

ぼくのみているところに

かならずかずくんがいた

だからきっと

かみにさわりたかったんだよ

せんせいがぼくのそばにきて

さとちゃんもやきゅうやれば

っていった

ぼくはひとりでいるのがすきだから

やきゅうなんてしないっていった

せんせいが

ぼくをぎゅっしてくれたから

ぼくはいつもどおりせんせいのかみにさわった