写真部のリアル

ハチ

第1話

ある暖かい春の日のことだった。

いつもの様に菜葉が部室に向かっていると後ろから声が聞こえた。


『よっ、菜葉。また同じクラスじゃんか。』


同じ写真部の隼人だ。手には彼のお気に入りのカメラがある。


『なんだ、隼人じゃない。驚かせないでよ。』


そう言う菜葉に隼人が少しむっとして答える。


『なんだよ、嫌なのかよ、同じクラスで。』


『そう言うわけじゃないけどさ…。』


菜葉は前を向いて答える。


『今年も行事とかないのかなって思うと少しつまらなくってさ、去年とかなんも無かったじゃん。』


『んー、それはどうかな、状況は多少良くなってきてるんじゃねえのか?』


そう言って隼人は急にカメラを構える。

何よっ、と言う菜葉に向かっていいからポーズ取れと急かし、一枚の写真を撮った。


『なんかさ、うまく行くんじゃないかって、良い方に考えようぜ。』


そう言って彼が差し出した写真には、ぎこちない笑顔の菜葉と綺麗な桜が輝いていた。


そんな彼や、桜の咲く春の暖かさによって、彼女の心も少し暖まった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

写真部のリアル ハチ @nanahachi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ