§7 陸上部の先輩

 夏休みに入ってすぐ、七海は初絵たち4人と、サッカー部の応援に市営グランドへ行った。自分の部活はさぼって、暑いグランドを駆け巡る千宙の姿を目で追った。他の3人も同じく、試合よりも、タイプの男子を探すのに一生懸命だった。

「あの5番の子、いいんじゃない?」「相手チームの8番が素敵!」「あの6番は隣のクラスの黒岩君だよね。サッカー部だったんだ。」

 試合が終わり、付き合ってくれたお礼に、私は3人にアイスをおごった。

「七海、どうだった?立松君を十分堪能した?」と初絵に問われ、

「堪能って、どういう意味?皆だって、何を見てたのよ。」と返した。初絵は黒岩君の事が気になっているらしく、私に情報を求めてきた。


 翌日、私は陸上部の練習に学校へ行ったが、サッカー部の姿はなかった。まだ勝ち進んでいて、学校へは来ていないみたいだった。七海はがっかりしながら、フィールドでストレッチを始めた。そこへ、1年先輩の百瀬ももせ竹彦たけひこが声を掛けてきた。

「梅枝さん、昨日はどうしたの?部活を休んだでしょ。体調不良?」

「ええまあ。ちょっと用事があって。」

 百瀬は七海の相談相手になったり、走り方のアドバイスをしたり、いつも親切だった。後輩の男子に対しては少し乱暴な所はあるが、そんな彼を嫌いではなかった。百瀬は彼女の事を、いつも特別な目で見ていた。

「もうすぐ大会だから、仕上げないとね。一緒に走ろうか?」と言われ、何の抵抗もなく承諾した。トラックを2周した所で、百瀬先輩が横に来て、

「梅枝さんは、好きな男子とかはいるの?」と走りながら訊いてきた。

「ええまあ。」とあいまいに答えると、「そうか、いるのか!残念だな。」と言って、先を走って行った。

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