死神 3

「ねぇ、ノート返してよ!」

 女の子が・・・ いや、死神がまた同じことを言ってきた。もしこいつが死神なら、やっぱこのノートはデ×××トてこと? もし本当なら、こんなチャンス、二度とないはず!

 オレはこう言い放った。

「嫌だね」

 すとるかわいい死神は怪訝けげんな顔を見せた。

「え、どうして?」

「オレは今どうしても殺したいヤツがいるんだ。そいつの名前を書かせろ!」

「あなた、何言ってんの?」

「これ、デ×××トだろ?」

 かわいい死神はプッと噴き出した。

「あはは、何を言うかと思えば・・・

 それは近々死ぬ人の名簿よ。私たち死神はそれを見て仕事するの。あなたが持ってても全然意味がないじゃん!」

 近々死ぬ人の名簿・・・ んじゃあ、こいつに名前を書き込めば、やっぱそいつは死ぬってことじゃんか! やっぱこいつはデ×××トだ!

 オレはジャケットの内ポケットからボールペンを取り出した。さっきの万引き野郎の名前を書こうと思ったのだ。が、ここで大事なミスに気付いた。やつらの名前がわからないのだ。これじゃあ、ぜんぜん意味がないじゃん・・・

「何やってんのよ! ねぇ、ノート返してよ!」

 かわいい死神はいらついてきたようだ。語気が荒くなってきた。

「嫌だ!」

 オレの語気も荒くなってきた。が、ここでいいことを思いついた。

「じゃ、お前がやつらを殺してくれよ」

「殺す? 誰を?」

「さっき書店で万引きをして、万引きGメンを刺し殺した男子高校生だよ」

 いや、死んだかどうかまでは確認してないけど。

「知らないわよ、そんなの!」

 死神はそう言い放った。つれないやつだなぁ・・・ まあ、こいつ、あのときあの場所にいなかったんだ。あの事件のことなんか、知ってるはずがないよな・・・

 かわいい死神は言葉を続けた。

「だいたい私は死神よ。悪魔じゃないの。死んだ人や死ぬ間際の人から魂を奪うことはできるけど、ピンピンしてる人から命を奪うことは絶対できないわよ。

 ねぇ、いい加減、そのノート、返してよ!」

 ヤツはさらにイライラしてきた。でも、オレもこのまま引き下がる気は毛頭なかった。う~ん、何か他にいい案はないか? そうだ!

「じゃあ、何か代わりのものを出してくれよ!」

「ええ・・・」

 かわいい死神はオレのその要求に困ってしまったようだ。ちょっと考えると、何かいいアイデアがポーンと浮かんだらしく、こう言った。

「じゃ、1ついいことを教えてあげる。教えてあげるから、そのノート、絶対返してよ!」

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