最強チートか美少女ハーレム、どっちがいい? 両方だ!と言えるくらいが丁度いい!(願望)

半濁天゜

第1話 村娘の食事と発育について

 帝国との衝突から2日。辺境の村に、ゆっくりと朝が戻った。


 キッチンから漏れる、包丁の音が心地いい。どこか楽しげな物音を、ずっと聞いてたい気分だよ。


 でも、タトラにこのまま使用人みたいなことをさせられない。今日こそはそう言わないと。


 薄暗さに慣れた目で、さっと身支度をして部屋をでる。


「おはようタトラ」

「おはようございますロアンさま」


 タトラの束ねた髪が弧を描き、弾ける笑顔が振り返る。優しい目尻につぶらな瞳。その愛らしさに、癒やされまくる。


 ただ、十五にしては小柄で、痩せ気味なのが心配だ。ってか、村全体がそうだから早急に対策を考えないと……、


「……そんなに見られると恥ずかしい、です」

「あっ、ごめん、そんなつもりじゃ……」

「いえ、その、貧相な体でよければ好きなだけご覧くださいっ」


 よくないよっ、オレが誤解されるからっ。


「いや、オレは村の栄養不足が心配で」

「栄養……やっぱりロアンさまは、おっきな胸がお好きなんですね……」


 やっぱりって何? オレ、胸をチラ見したりしてないよ? ……この村にきてからは。


「ホントにそんなんじゃないからね」

「はい、すみません。ロアンさまは命の恩人なのに、わたしはお役に立てなくて……」


 立てるから、オレはエロくないってわかってくれたら十分だからっ。スレンダーな胸に手を当てて、うつむくタトラに、


「オレが勝手に、ここの領主や帝国と揉めたんだ。恩人なんて思わないで。それにオレの力は、オレがぼっちでないと発動しない。タトラが尽くしてくれても、仲よしにはなれないんだ」


 顔をあげる彼女から、つい目を逸らしてしまう。


「そんな、わたしたちはロアンさまに救われました。せめて身の回りのお世話をさせてください。それ以上はなにも望みませんから、……それでもご迷惑でしょうか?」


 いくらオレがぼっちでも。すがりつくような彼女の厚意を、断れるわけがなく、


「じゃあお願いするけど、やめたくなったらいつでも言ってね」

「絶対やめたくなりません」


 にこやかに答える彼女のうしろで、ヤカンのお湯が溢れだす。タトラは手早くヤカンを外して、再び朝食作りに取りかかる。頬をほんのり染めながら。


 それを見て、そそくさと顔を洗いに外へでた。





 しばらくして戻ってみると、二人分の朝食ができていた。最初はタトラが遠慮して、二人で食べるまで一悶着あったなぁ、なんて思いながら席に着く。


 メニューは、パン、サラダ、干物をお湯で戻したスープにお白湯さゆ。これでも、この村じゃかなり豪勢な朝食だ。


「タトラのおかげで毎回ご飯が美味しいよ」


 本当に美味しい。食材の乏しさを、タトラが腕と工夫でカバーしてくれている。


「そう言って貰えると嬉しいです。でも、わたしまで一緒に頂いて、なんだか申し訳ないです……」


 手を止めて、心苦しそうに言うタトラ。そうだな、痩せ気味な村人たちにも、これくらいの食事をさせてあげたい。


「気にしないで。すぐオレがみんなも食べられるようになんとかするから」

「本当ですか!?」


 驚きと期待が入り交じる彼女の声に、


「ああ、オレに任せて!」


 自信たっぷりに答えてみせる。……スキルソロ・エニーを戦闘以外で使うのは初めてだけど。でも大丈夫! なぜだろう、不思議とそう確信できる。


 ……なんてね。そんなこそばゆい朝の空気を、夏の陽射しが溶かしはじめていた。

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