満員電車に乗っていると、咳の音がした。

斜め後ろからだろうか、気になって振り向いてみても誰かわからない。

電車から降り、会社に向かう道を歩いていると、咳の音が聞こえた。

振り返ると、誰もいない。

首をかしげて、歩き出す。

さらに、咳の音が聞こえてきた。

振り返ると誰もいない。

何か怖くなって、走り出した。

咳の音が聞こえてくる。

振り返るのも怖くになり、振り切るように道を走った。

息を切らせて出社して席についたが、しばらくして、咳が聞こえてきた。

席に座り、ディスプレイに向かっている人達ばかりで、特定は無理だ。

気になって仕方ない。

咳が続く。

「咳をしているのは誰だ」

立ち上がって叫んでしまった。

部屋の全員が一斉にたちあがり、こちらに向かい指をさした。

「お前だよ」



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