目標設定型ドーパミン中毒者
巷は疫病が流行りその影響であっさりと、働いていた会社はつぶれてしまった。
就職活動をしているが、転職先はみつからず失業保険で食いつないでいる。
保険の給付もいつまで続くわけもなく、気持ちだけが焦っている。
朝から職安で仕事を探しているが、まったく見つからない。
帰りに宝くじを買ったが、気休めにもならないだろう。
さらに、夜まで家に引きこもり、求職サイトや、求人情報を検索していると、奇妙なサイトを見つけた。
ただひたすら目標の設定の仕方が書かれているサイトで、どのように目標を設定するべきかというノウハウがひたすら書かれている。
最終的な目標は大きくする。
目標は、より具体的にイメージを沸かせるといい。
最終的な目的を達成するため、毎日に実施する簡単な目標を設定する。
日々、簡単な目標を達成することで、快感を刺激する。
快感を刺激すると、人はそれが癖になる。
将来が不安なときは、どうしても一括千金を夢見てしまう。
最終目標は大きく一億円を手に入れるとした。
一億円を手に入れるイメージを描く。
たくさんの0の数が記載された貯金通帳を思い浮かべる。
つづいて、目の前に札束の山があることを思い浮かべる。
百万円の束は大体一センチの幅だ。
一億なら、その束が百束となる。
一メートル積まれた一万円の新札の束を思い浮かべた。
ワクワクしてきた。タワーマンションに住むイメージを浮かべる。
窓から街を見おろしている。
安アパートの一室から窓をあけただけのはずが、街を見下ろす高層マンションのイメージに変わっていた。
こんな高揚感は初めてだった。
それから、色々な目標を設定してイメージした。
外国に行く。
会社を経営する。
そのたびに、すさまじい高揚感がある。
失業保険も切れそうなある日、前に買った宝くじを見つけた。
当選番号を調べると当たっている。
うれしいが、目標を設定したときの高揚感はない。
宝くじを投げ捨てると、また別の目標をさがした。
あの、高揚感を味わうためなら、特に宝くじの当選など惜しくもない。
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