文章は短い方がいい

 巷では長い名前を略すことが流行っている。

小説でもあえて長いタイトルをつけて、略すことで印象に残したりしている。

WEBでも小説を投稿するサイトがたくさんできて、短く簡単な内容でも世間に公開することが可能だ。

WEB小説のサイトでも、PVを稼ぐには、短ければ短いほどいいとされ、一行だけの小説が流行りだした。

さらに、行きついた先は一文字だけになった。

【あ】、【か】という一文字で話を連想するという不可思議なこととなり、だれが書いても同じものがサイトにあふれ出した。

感想では、

【あ】という一文字で、ああ、いい暮らしができて……と連想するものや、

あ、ここには人がいないと連想する者もいて、わけのわからない論争が繰り広げられた。

違う人が同じ【あ】という文字を書いても、感想は何故か違い、同じ文字でも流行る人と完全に無視する人もいた。


人はいろいろとこれに考察し、【あ】という言葉の線の曲がり方や、フォントの色、サイトの背景色についてなど色々と考察が飛んだ。


自分も【あ】という文字だけ書かれたページを考察し、色々意味を考察して感想をかえしていた。

一文字見ただけで、外国の風景が想像できたり、その人の姿がうかびあがったり、声が聞こえたりした。

そういった考察をかきこんでいると、小学校にあがったばかりの娘が、画面をのぞき込んできた。


「これって あ ってよむんだよね?」

この文字から連想される雰囲気を娘に教えてあげようと思ったが、なぜかこの文字が【あ】としか読めなくなっていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る