再会した猫

 飼っていた三毛猫が亡くなってしまった。

なんでも自分が生まれる前から家に我が物顔で居座っていた猫だ。

亡くなったときに荼毘に付した記憶を思い返すと、胸が締め付けられるようだった。

しばらくは失意のどん底で悲しみに暮れていたが、ある日、散歩をしていると似た三毛猫を見かけた。

尻尾の形や、毛並みもよく似ている。

近づくとさっさと逃げてしまう。

人違いならぬ猫違いということだろう。

それから、ちらほらとその三毛猫を行く先々で見かけるようになった。

大体塀の上や、屋根にいて、こちらを見て記憶のままの鳴き声を、その猫はかけてきた。

ただ、こちらが近づくとやはりさっさと逃げてしまう。

毎日のようにその猫を見かけていると、次第に近づいても逃げないようになっていた。

もう少し、頭をなぜられるというところで、今日は逃げてしまう。

その目は何かもの言いたげに見えた。


数日後、夕方に例の三毛猫が踏切にいるのを見つけた。

飼っていた猫の名前で呼びかけると、近づいてきた。

足にまとわりつく。記憶のままだった。

懐かしい思いがこみ上げてくる。

思いのほか、猫が力強く足に体当たりし、ふらついて線路に足が挟まってしまった。

足を抜こうとしたが、ふらつき倒れこんでしまった。

猫は遮断機の向こうにいた。

けたたましい音を立て、遮断機がおりた。

人はだれもいない。

ここは人通りが少ない場所だ。

非常用のボタンを押そうにも立ち上がれない。


電車が警笛をならしながら、ブレーキ―をかけたが間に合わない。

弾き飛ばされるように空中を舞い、アスファルトにたたきつけれた。

三毛猫が近くによってくる。

間違いない。飼っていた猫だ。

化けて出たのか……。

猫は滴る血を小さい舌でなめとり、満足気にこちらをみた。

何故と空気が抜けたようにつぶやいた。

「何故? そもそも俺を殺したのはお前だろ? 復讐だよ」

猫はほくそ笑みながらそういった。

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