大人になっても覚えていると……。

確か小学生高学年くらいのことだと思う。

当時の自分が住んでいた家は、九州にある海沿いの一軒家で、

近所にはよく遊ぶ女の子の家があった。

遊びといっても、たわいないことや、どうでもいい話をするくらいだったが……。

その日も、いつもと同じようにその子の家には遊びに行き、彼女の部屋でどうでもいいような話をしていた。

当時、その子がいっていたのは、大人になっても覚えていると、大人になれなくなるという単語の話で、よく聞くつまらない怪談の一種と今となればおもうが、

当時はそれなりに怖かった。


その話はすっかり忘れていて、たまたま、帰省して当時自分の住んでいた家を見てみることになった。

自分もすでに家族がおり、子供のころは懐かしい思い出に過ぎなくなってしまっている。

子供のころに暮らしていた家も取り壊されており、跡形もなかったが、幼馴染でもある例の女の子の家は、朽ち果てている状態で残っていた。

ふと、その家をのぞき込むと、覚えていると大人になれなくなるという単語が思い出された。

めまいがする。



気が付くと、なぜか、自分は小学生になっており、懐かしい幼馴染の少女の部屋にいた。

彼女は満面の笑みで、この単語をずっと覚えていると大人になれないんだって。

といった。


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