政略結婚後、婚約破棄され処刑された私は、幽霊となって復讐する

大舟

不条理

 私は、キール王国北側の小さな村に住む両親のもとに生まれた。家は先祖代々貧しくて、一日一食なんて当たり前。服も靴もボロボロで、村の皆からも軽蔑の目で見られていた。

 けれど、私は両親を恨んだことは一度もなかった。両親との生活の日々は、大変だけど満ち足りていた。量は少なくても、お母さんのご飯はなんでも美味しかったし、お父さんは優しくなんでも相談に乗ってくれた。3人で過ごす時間は、本当に幸せだった。

 そんなある日、突然のことだった。


「お父さん、お母さん、話って?」


「喜べロコ!お前に王国皇太子様から縁談の話が来てるんだ!」


「え??わ、、わたしに??」


 あまりに突然の話すぎて、言葉が出なくなる。そんな私をよそに、お父さんは興奮した様子で続ける。


「そうだとも!一週間ほど前に、村の様子を皇太子様が直々にご覧になりにいらしていただろう?その時にお前を見かけていらしたそうで、是非にと話があった!!」


「ロコ!こんな幸せなお誘いは二度とないわ!まさか、皇太子様の方からお話をいただけるなんて!!」


 お母さんも、やや息を荒げ興奮した様子で話す。2人とも、本当に私のことを思って言ってれているんだろう。私の答えはもう、決まっていた。


「うん。私は、縁談を受けるわ」


 2人に、恩返しがしたかったから。2人に、楽をさせてあげたかったから。2人が、大好きだから。

 それから話はとんとん拍子に進んだ。貴族の方々への挨拶周りから、王族用衣装の新調まで、経験したことのない忙しさだった。でも、これでお父さんとお母さんを楽にさせてあげられる。ご飯をお腹いっぱい食べさせてあげられる。その一心で頑張った。


「ロコさん?大丈夫ですか?」


「は!はい!だ、大丈夫です!


「そうですか、何かあったら、遠慮なく私に言ってくださいね」


「は、はい!」


 カサル皇太子様は、大変丁寧なお人だった。いつもこうして、私のことを気にかけて下さる。妹君のカレン様もまた、美しく上品な方だ。本当に、この話を受けてよかったと、そう思った。あの日までは…





 その話もまた、突然だった。


「ど…どういうことですか…」


「どうもこうもない。さっきも言った通り、この話はなしだ。」


 カサル皇太子様は、私が見たことのない冷たい表情で、淡々と話す。


「そ、そんな…」


「白々しいな。どうせお前の目的は皇太子夫人の権力と金なんだろ。カレンが全て調べてくれたよ。全く薄汚い平民女の考えそうなことだ。」


 ど、どうしてカレン様が…


「わ、私は決してそんなつもりでは!」


「うるさい!この女狐が!だいたい俺は始めからお前みたいな売女と結婚する気などさらさらなかった!早く消えろ!」


 私は呆然と立ち尽くす。全身の力が抜け、ただ立っているだけの状態。私は全く現実を受け止められなかった。

 その後駆けつけてきた守衛兵により、私は両親ともども王宮から追放された。


 村に戻った私たちは、文字通り抜け殻のような生活を送っていた。村人たちからは、権力欲しさに皇太子様に近づいた不届き者と烙印を押され、もはや私たちは居場所を失っていた。


 一週間後、王国兵が4人ほど、銃剣を手に私たちの元に現れ、言った。


「皇太子様の命により、貴様らを拘束、処刑する」



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