エピローグ

 また、軽々しい軽快な音を立ててドアを閉めた。心なしか、足音も軽快に口角も上がっている気がする。

「32番…」

呼ばれて立ち上がった男性と目が合った。思い詰めたような、今にもすべてを投げ出しそうな目していた。

「きっとうまくいきます、貴方の人生に幸せを」

告げた言葉を紳士は噛みしめるように頷き返した。

  ありがとうございます

その言葉は、本当に自分に向かって投げられている。今ならそう分かる。


 彼は言った。

  貴方は、支えだと。出来なくてもそれによって支えられる何かがある。上手く行かなくても、それを楽しめばいいと。しあわせはやって来ない、きっと貴方の中にいると。そんな貴方が好きだと。

 彼女さんも、貴方だからこそ続いたんです。大切にしてあげてくださいね。海音寺さんの人生に祝福を。彼はそう言い微笑んだ。


就活の面接、という名のカウンセリングを終え、ビルの外に出た。乾き切っていたはずのアスファルトは湿り、涼しくて雨の匂いをかすかに含んだ空気が僕の顔も心も洗って行った。まだ、サークルの前だろう。彼女の声が聴きたくなった。LINEを起動して電話を掛けてみる。もう怖くない。

「はい!」

ワンコールで耳に届いたその声は、前

よりもずっとずっと美しくすき通っていた。ぼくは、その声を全身に吸い込むと、口角が自然に上がった口をひらいた。

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終わりなき静寂 奥寺 趙雲 @wow29Nkuna

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