私を呼ぶ声

@hirman05

第1話 穏やかな人生なんて


「おだかやかな人生なんて、あるわけないですよ」

 スナフキンが、ワクワクしながらいいました。


          「楽しいムーミン一家」より


 気づいた時には一緒にいた。

 人と過ごしているのは何年ぶりだろう。

今まで、学校では私のことを誰も見向きもしてくれなかった。

ただ、したかった。


普通の話をして、

普通に笑って、

普通に喧嘩して…

こんな「普通のこと」をしたかっただけだった。


でも、いざこうして「普通」の時間を一緒に過ごしてみると、頭が真っ白になり何をしたかったのかも、わからない。

「普通」のことをしたかったのではなく、ただ誰かと過ごしたかっただけなのかもしれない。


 夏海は、消え入りそうな感覚で、周りのみんなを眺めていた。

ものごとは必ずしも望んだことが叶ったとして、幸せとは限らない。

なぜ、自分だけが。


「ねえ、ハル。」

「ん?」


と振り返ったハルは、夏海を見て息をのんだ。


 先ほどまで馬鹿話をしていた夏海のそれとは、明らかに違っていた。

 思わず、後退りする。

この狭い教室では、後退りできる場所などなく、ただ机にぶつかってしまうだけだ。


 「どうしたの?夏。そんな怖い顔して。せっかくの綺麗な顔が台無しじゃ~ん…わぱぱ…」

 ハルの様子から、夏海がおかしいことに、ほかの3人も気が付いたようだった。

 「どうした?夏海、顔色わるくないか。」


 祐一の声を無視し、夏海はハルにとびかかる。

 「ねえ、いいやん。そんなにつまんないんやろ。なら、死んじゃえばいいやん。私が代わってあげるけん。その身体ちょうだいよ。ねえ、頂戴よッ!!!!!」

 

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