十三番目の弟子

野坏三夜

本編

前編

 カランカラン…、ドアのベルが鳴り響き「いらっしゃいませ〜! 」と、元気な女性の声が聞こえる。開店して小一時間というのに、既にテーブル席はうまっていてこのカフェの人気度が伺える。ちなみにカウンター席はまだ空いている。

 この量の客に対して、店員は一人だけであった、しかも女性で。あちこちでチリンチリンとなるベルに呼ばれ、右往左往している女性。でも丁寧に仕事をこなしており、客と談笑している風にも見える。そんな女性の店員の名前はロネ。この薬草カフェの店長であり、唯一の店員である。メニューを聞くのはロネだが、商品を運ぶのは白い梟である。

 そんな動物とのコミュニケーションもばっちり、店員の愛想も良し、薬草茶なども美味しいの三拍子揃った店であった。


 そこに駆け込む一人の女性客。客はカウンター席に座り、即座にベルを鳴らす。ロネは「は〜い」と言いながらそちらに向かう。


「お久しぶりです。カティエ様。今日はどんな御用でいらしたんです? 」


 客の名前はカティエ。紫のくるくるした長い髪が印象的な女性であった。


「もう、分かってるくせに。相変わらずの性格してるわね、あんた。…もう少しでよ。いつもの場所で皆が集まるわ。あんたは予定の時間よりも半刻早く来なさいね? 」

「わかりました。で、ご注文は? 」


 あんたねぇ、とカティエは言うが、表情を見るに既に注文は決まっているようだ。


「今日のご気分はいかがですか、よ」

「わかりました」


 ニコリとし、少しそのまま静止するロネ。


「少々お待ちくださいね、カティエ様」


 ロネは直ぐにダイニングへと行き、薬草を取りだし、調合を始める。上手くできたのであろう、満足気な表情をし、ロネは白梟が持つ専用トレイに茶を乗せ、運ばせる。白梟はすぐさまカティエの元にトレイを置き、それをカティエはそれを受け取る。香りを嗅ぎ、


「さすがね、ロネ。私が疲れていることをみたみたいね」


 こくこく、とそれを飲み終えると、カティエはお代をそのカウンターに置いて、


「必ず来なさいね」


 と言い残して帰って行った。


「またおこしてくださいね」


 ロネは笑ってカティエを見送った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る