桜が綺麗ですね

@Ciluelita

第1話

『月が綺麗ですね』

TVなどの影響で知ってる人は多いであろうこの言葉。

もちろん俺も知ってはいる。

だが意味に関してはどうしても納得がいかない。

よく「国語苦手だろ」と言われるがまったくもってその通り。

なにがどうなって「I Love You」が「月が綺麗」なことになるのだろうか…。

そんなのもうなんでもありじゃねぇか…。

素直に伝えとけよとかと思いつつもそんなことだからいつまでも平均点止まりなのだという自分もいる。

そんな葛藤を胸に返されたおよそ平均点のテストをやや乱暴に机に突っ込んだ。

「ふふっ」

ふと横から聞こえたその声に反射的に顔が向いてしまう。

「世の中自分が正義じゃないんだよ?」

「は?」

目が合った瞬間にそんなことを言われなんとも間抜けな声が出てしまう。

「たまには長いものに巻かれなよ。たかが学校のテストなんだし。頭良いんだからさ。」

これはどういう意味だろうか…。

考えても拉致があかないと思い

「あぁ…ご忠告ありがと……」

とだけ返事してまた前を向く。

結局なんだったのだろうか…。

なんてことを考えながら横をチラッと見るともう既に彼女は俺に興味をなくしたみたいで手に持っている紙で紙飛行機を折っている。

「…!?」

紙飛行機を…折っている……?

俺はその光景に目を離せないでいた。

なぜなら今はテスト返却の時間だ。

俺の学校ではテストを返却する時は後で解説されるテストの内容を記したり間違えを記入する為の赤ペン以外机の上に置いてはいけないというルールがある。答えを書き換えないようにという配慮もあってだろう。

よって机の上に紙飛行機を折る紙を出すなど言語道断。人目を気にしている様子もない。

俺でもわかった。

コイツは…テスト用紙で紙飛行機を折ってやがるということだ……。

信じられない。頭が痛くなってきた。

「おい佐藤。横ばっかみてんじゃねぇっ。」

「…!?」

「お前今回のテスト散々だったろ。そんな隣をガン見してる余裕あるのかぁ?」

クラスのあちこちから忍び笑いが聞こえる。

言いたいことはあったが

「すみません…。」

とだけ謝り前を向く。

最悪だ。だいたい紙飛行機を折っているコイツにはなにも言わないのかよ…。

そう思いながらまたチラッと隣を見ると、まるでさっき俺が怒られたことなど眼中に無いかのように夢中で右翼を折っているところだった。

その後もテストの解説が続いたが俺はどうにも集中することができなかった。

「キーンコーンカーンコーン」

というチャイムとともに出来上がった紙飛行機を持つ彼女を俺は複雑な思いで見つめながら号令をするのであった。

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