第2話 極限なるスキル
3年前。俺ーー
そこでは人間が他種族と長い間戦争を続ける世界だった。俺はそこに勇者として召喚され、色々あったが、結局は戦争を止める為に旅に出たのだ。
勿論、戦うのは怖かった。敵だとしても、他人の命を奪う事はあの時の俺には辛い体験だった事に変わりはない。敵に剣を向け、魔法を放つ度に体が震え、言葉に出来ない罪悪感に毎日のように蝕まれ眠れない日もあった。
最初は命の奪い合いの毎日が嫌で、何度も逃げたいと思った。
しかし、旅の途中で出会う人々を見て、少しずつ『助けたい』と思うようになった。それから、旅を続け戦争を撒き散らす魔王達を倒す事で戦争は終結した。
その時には15歳で召喚されてから5年が過ぎ、20歳になっていた。
俺は、これでやっと世界が平和になる。そう確信していた.....あの時までは。
戦争を終結させ、他種族の王達と和平条約を結び人間の国に戻った俺を待っていたのは、卑劣な裏切りだった。
その結果、俺は全身に深手を負いそのまま元の世界に送還された。
しかし、気がつくと俺は異世界に召喚される直前の年齢と時間に戻っていた。
だが、俺の姿は同姓同名の別人の様に変わっていた。茶髪だった髪は黒く染まり、肌も引きこもりの様に白くなっていた。顔立ちは、一般的ものから若干端整な物に変わっていた。
不思議な事に、周りの連中が俺の変化に対して気にする事はなかった。
両親でさえも、あれ?イメチェンでもしたの、みたいな感じだった。
しかし、それから俺は他人がどんなに苦しんでいようと何も感じなくなった。そして、今なら命を奪う事も躊躇なく出来る確信が持てる様にもなっていた。
□□□□□
『目覚めなさい』
無機質な声によって、光に包まれ失った意識が目覚める。霞んでいた視界が見える様になる。
すると、空中に浮遊する水晶玉を囲む様に、俺も含めたクラスメイトが立っており、周りは何もない白い空間が広がっていた。
感覚的に体に異常は感じられないが、一応触って確かめようと腕に力を込めたのだが、腕はピクリとも動かなかった。首から上は動くが、声も出す事が出来ないようだ。
『初めまして、異世界人の皆さん。これより皆さんの現状などについて説明させて頂きますので、勝手ながら体の自由を奪わせて頂きました。』
声は水晶玉から聞こえて来るが、感情は一切込められておらず、まるで原稿を読み上げているようだった。
生徒の数名が叫び声を上げようとしているのか、口をあけたり、目を血走らせて何事か言っている。中には泣いている奴までいる。
『突然ですが、皆さんは異世界ルーファスのとある王国に召喚されています。ですが今のままではその肉体が、ルーファスに存在する
どうやら、俺達がこれから行く世界は前に俺が勇者をしていた世界で間違いないようだ。
『今から皆さんの肉体を異世界ルーファスの世界に適合させます。これは世界の盟約によって決められているので、早速適合を開始いたします。』
水晶玉はそう言い終わると、即座に詠唱を唱え始める。すると、足下に魔法陣が出現し光が俺たちを包み込む。
その瞬間ーーーー
《肉体の適合が完了した事により能力が解放されました。更に、特殊条件を達成している為、固有スキル『真・魔力支配』を取得しました。
複数の上位者の介入を確認…………。
上位者との神力の融合が確認されました。それにより、
称号『異世界人』『再臨の勇者』『医神の加護』を取得しました。
称号『再臨の勇者』を取得した事で、『聖剣』の使用が可能になりました。》
頭の中に直接、機械的な声が聞こえた。
『これで肉体の適合は終了しました』
相変わらず呆気ないな。
……ってか、気になる事がいくつかあるが、気にしてもしょうがないか.....。
しかし、何はともあれ、以前に持っていた
俺が前に召喚された時は、最早神話などのお伽噺の中だけのスキルだった。
その為、余計な混乱を防ぐ為にも、
『皆さんが取得された筈の固有スキルは、異世界転移する者なら必ず得られる能力のことです。その力は人それぞれで、どのようなスキルを取得するのかは私でも分かりません。異世界ルーファスでは100人に1人が何かしらの固有スキルを生まれながらに取得し、他には何かしらの条件を満たすことで取得する事がございます』
『固有スキル調べる場合、は自身でステータスと念じることで現在所持している固有スキルなどを確認できます。そしてその固有スキルの効果を知りたいとさらに念じますと、その固有スキルの能力などを確認できます』
水晶玉の言葉を聞くと、クラスの数人が早速念じたのか、視線を何もない空間を文字を読んでいるように動いている。
固有スキルの強さは、自分のステータスを見た奴の反応を見ればだいたい分かるな。中には、弱すぎて顔面蒼白の奴もいるが、御愁傷様だ。
周りの観察をだいたい終えた俺もステータスと念じる。
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名前 トウヤ・イチノセ
種族 人間
『
『
固有スキル
『真・魔力支配 【覚醒レベル:1】』
称号
『異世界人』『再臨の勇者』『医神の加護』
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ステータスを確認した俺は、早速念じ
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『
効果
・全ての魔法を取得する為の適性を得る。
・全魔法系スキルの取得速度が大幅上昇。
・魔法の成長速度が上昇する。
・魔法の威力や効果が上昇する。
・魔法を発動する際の対価が減少する。
・《封印状態》
『
効果
・受けたダメージを自動回復出来る。
・癒しの波動を放つ。効果範囲と回復値は消費魔力により変わる。
・失った部位の再生が可能。
・呪いや病苦も治癒させる事が出来る。
・《封印状態》
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以前の俺も、最初はそう思っていた。
だが、異世界ルーファスでは種族固有の魔法がある。最も有名なのは、上位の竜や竜の血を引く一族しか使えない竜魔法やエルフ族だけが使える精霊魔法などだろう。しかし、『
これだけでも十分に有能なスキルだ。
そして、どうやら新しく手に入れた『
呪いや病苦は、回復魔法では治す事が出来ないのでいざという時は便利だ。
しかも、まだ両方とも封印状態とは何とも頼もしいスキルだ。
次は、固有スキル『真・魔力支配』を見る。
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『真・魔力支配』【覚醒LV:1】
効果
・魔法の発動速度が上昇する。
・魔力を効率的に使用できる。
・魔素を自らの魔力として使用できる。しかし、身体に溜めておく場合は苦痛が生じる。
・【覚醒LV】が上昇することで、かつて取得していた魔法が解放される。
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どうやらスキルにある魔力操作の上位互換のような能力だ。そして、【覚醒LV】のレベルを上げる事で、俺の身に付けていた力が解放されるのだろう。
次に称号の確認をしようとした所で水晶玉が喋り出した。
『私から教えられる事は以上ですので、早速皆さんを異世界に転送させて頂きます。』
すると水晶玉は再度詠唱を唱え始めると俺達の足下に魔法陣が出現し、輝きを増して行き.....俺以外は異世界に旅立った。
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