第29話 対抗戦 オストの対戦相手

俺はみんなに見送れながら入場したはずだったんだが何故か皆に暴言を言われるようになった。


「なんでお前が来るんだよ!シルクの婚約者やろうが!」


「そだそだ〜!お前なんかシルクさんと似合わねーんだよ!」


「まーけろ!まーけろ!」


(言わせておけば……ちょっと黙れせておくか)


俺は指を回転させると観客の殆どを【沈黙】で全員喋れなくしてやった。


だがその一方ーー


「オスト君頑張ってくださ〜〜い!」


「オスト頑張るのよぉー」


「オベスト〜頑張ってねぇ〜!」


エミリア・リベストア・ブレアは大きな声で旗を上げながら応援してきた。

俺は静かに手を小さく振った。


「やっとこれで出来る……ったく」


「ハハハ…君も中々苦労してるんだね……」


「全くだよ……ところで君は?」


「あっ……ごめんね僕はアリベスって言うんだよろしく」


「俺はオストよろしく」


俺たちが自己紹介を終わると「両者始めてください!」っと掛け声が入り遂に戦いが始まった。


「それじゃあまずは手始めに行かせてもらうよ」


アリベスはまず俺の実力を測るという事だろうか…誰でも反撃できるような戦略や魔法攻撃で俺を試そうとしてくるが俺はそれを相手に測れない様に少しの力を

出して全てを避ける。


すると攻撃は収まりアリベスはその場に留まり魔法詠唱を始めた。


「我の魔力の糧となりてその込めた力を震え〘軌功炎〙」


すると特大な魔力を使った魔法、軌功炎は俺の逃げる道すら無くされ周りには炎の竜巻が飛び散りしばらくすると炎の中から無数の円が出てきた。


(なんだこれ……円板型をした炎?)


「これが目的です!食らってください!」


アリベスは大きな声でそう言うと炎の円板は俺の周りを飛び散り避けなければ真っ二つにされるほどだ。


(面倒だ……ここはバレないようにアレを使うか)


〘無力化〙


無属性魔法には使える者と使えない物が存在する…理由はただ単純だ。


そもそも無属性とは何に対しても属さない言わば「無の存在」として知られているのだ。

だから【転移】や【無力化】などはあまり知られていない。


「な!?なんで僕の攻撃が無くなって……」


アリベスの軌功炎は全て無力化され魔法が消えた。


「まさか……君の仕業かい?オスト君」


「何を言ってるんだ?俺は何もしてないしその証拠に何も詠唱してないだろ?」


「言われてみれば……確かになら何故……」


どうやらバレないように無力化は成功したみたいだ…しかしこのあとが問題だ

こいつは強い…かなり強い部類に入る程の強さを持っている


(油断はできない…だから早急に終わらす)


俺は近づこうと一歩足を前に出すとバシン!っとアリベスに手のひらで体を叩かれた。


〘禁絶魔〙


すると目の前には『ピコン』っと久しぶりの通知が流れその内容はーー


『禁絶魔により全種の魔法属性が使えなくなりましたーー』


っと通知には書かれていた。


(前までは通知が来なかったのに……いきなり何故……でもこの通知はありがたい)


どうやらアリベスの魔法により俺は全ての魔法を封じ込められてしまった様だ。


「へへ…これで君はもう魔法は使えない!つまり君に勝ち目は無いのさ!」


「成程…そういう事か…だからあんな弱い演技までしたって訳か」


「そういうことさ…君はまんまと騙され僕の罠にかかった」


アリベスは徐々にこちらに近づいてくる……。


「それじゃあ僕も君とこれ以上戦うのは不本意だ…ここら辺で負けてもらうよ」


魔法詠唱を唱え始める。

しかし俺はその隙を狙った。


(いましかない!ここで一気に魔法詠唱を潰す)


〖可憐に落とし全てを回転せしーー守式 落天〗


俺はアリベスの腕を掴み回転をし地面に叩きつけたーーすると腰を打ったのか「痛い痛い痛い」っと大声を出したながら叫ぶ。


「こ、この野郎…よくも僕を痛めつけてくれたな……」


「そう言われても魔法を使えなくなったら武術しかないしな」


「こうなったら……君にはもうその体で動けなくしてやる!」


アリベスは怒りながら闇属性魔法の詠唱を唱えた。

魔法陣の中から出てきたのは、魔王・四大天使・閻炎魔えんごくまの三大ボスでプレイヤーの間で厄介とされてきた閻炎魔の下僕『悪魔』が出てきた。


(それでもアリベスの今の魔力ではまだ上位悪魔は呼び出せないのか)


呼び出した悪魔は下位悪魔でありホンマントゲームではよく経験値稼ぎとして

よく狩っていたモンスターなのだ。


「悪魔よ……あいつを殺れ…絶対だ」


そのままアリベスは悪い顔をしながら笑った。


「お前もこれで終わりだァァ!死ねー」


下位悪魔は基本的に知能はなく本能的に人を襲うのだが…何故かその悪魔は

呼び出した本人のアリベスの元に歩き出し俺は驚いた。


「く、来るなよ!お前の相手はあいつだ!は、早く殺せ!」


アリベスは震えた声で悪魔を説得しようとするがその歩みは止まらない。


「な、何をする気だ!僕はお前の主人だぞ……おい!」


その時、悪魔はアリベスの横でこう囁いた。


「貴様ごときが我に命令するな……人間風情があまり調子に乗るんじゃない」


そう悪魔が囁くとアリベスは慌てふためき逃げ出そうとする。

しかしそれを許されなかった。


悪魔はアリベスの喉元を掴み中に浮かした。


「ぐは……やめろ…お、まえの相手は、むこ、うだ…は、やくし、ろ……」


「何を言っているかさっぱり分からん……」


「ぼ、くをどう、する気だ……」


ギロっと対抗する目で悪魔を見るがその瞬間、アリベスは目を潰された。


「痛い痛い痛い痛い!ぼ、僕に何が起こったんだよ!?何も見えないし痛い!」


「ふむ……人間というのは実に愚かで弱小なのだな……」


それを見た俺は「待て!」っと大声で叫び悪魔を止めた。


「なんだ?貴様は」


「お前こそ…下位悪魔なのに何で喋れたり自我があるんだよ……」


「何を言っている…我は下位悪魔なのではない上位悪魔いや閻炎魔様に仕える4柱の内の1人……黎悪魔ザクエンだ」


黎悪魔……前世の頃のプレイヤー達の間ではまたの名を暗黒の黎。


そう呼ばれたこの悪魔は古くから閻炎魔に仕えし悪魔界の最強と呼ばれる4柱……つまり4人で閻炎魔に仕え守る存在であり4人の柱達にはそれぞれ色がある。


黎悪魔……闇属性魔法を極めた悪魔


翠悪魔……風属性魔法を極めた悪魔


緋悪魔……火属性魔法を極めた悪魔


素悪魔……無属性魔法を極めた悪魔


この悪魔達が黒・緑・赤・白の色に適切する魔法は最強と呼ばれるのだ。


何百年……何千年と生きている分極めるのも容易いのだ。


「お前は……黎悪魔ザクエンか……」


「あぁそうだ……ところで貴様からは面白そうな魔力の味がするぞ…」


(いきなりなんだ……魔力の味って……)


しかしそれを考える時間はなく観客たちは焦り会場外に出ようとした時……


黎悪魔ザクエンはパチン!っと指を鳴らし闇属性魔法で観客席から出られなくした。


「せっかくなのだ……観客がいないとつまらん」


楽しげにザクエンは笑う。


「ザクエン…お前はアリベスの魔力では呼び出せないはずだ…なのに何故」


「知りたいか?いいだろう…我は何百年何千年ずっと暇だったから来たのだ」


「そんな理由でアリベスの目を潰したのか」


「あぁあの声といい感情といい実に愉快だった」


その『愉快』という言葉に俺は心に引っかかった。


確かにアリベスという男は屑だが一応人間なのだ


「でもこの男目を潰しただけで気絶しているしな…そうだ、おい貴様我と勝負をしないか?」


「勝負?」


「あぁ勝敗は簡単…どちらかが『降参』っと言ったらそいつの負けだ…そして負け方は勝った方に主従関係を結ぶ……これでどうだ?」


俺はニヤッと笑い…その提案に了承した。


「それじゃあ久しぶり我は本気を出してやろう」


ザクエンは気絶しているしアリベスの真横に立った。

すると闇属性魔法の【憑依】を使い身体を乗っ取った。


「ふ、ふはは!実に素晴らしい!」


「それじゃあ始めようか……黎悪魔ザクエン」


「あぁ!面白い戦いになることを願ってやろう!」


俺は4柱の1人……黎悪魔ザクエンと戦うことになった。


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