公子、小鳥になつかれる

 王女を形作っていた粒子から、色が消えた。王女の魔力は属性を失い、1つのエネルギーのまとまりになった。



 そこから、新たな命が生まれる。


 王女は龍にも劣らない力を持ち、最期に、聖属性と闇属性を拮抗させた。

 魂に刻まれた経験は、彼女をより強者へと生まれ変わらせる。


 やがて俺たちの前に、大きな龍が現れた。

 白い翼と黒い翼、龍は聖なる力と闇の力を等しく持っていた。

 善なる者にはやさしく、悪には厳しい断罪を与える。その審判は、苛烈な気性の龍自身が決する。

 人間の敵にも味方にもなりうる存在だ。


「<称号>、守護龍ラファエラ」


 できれば、人間の敵にはなってほしくない。幼い龍に人を護る者としての<称号>を与えた。ちょっとズルい気はするけど。龍はラファエラ王女の記憶を引き継いでいない、王女とは別の子だから。


「ピヨッ」


 小鳥みたいな声で龍が鳴いた。生まれたての赤ちゃんだからなんだろうけど、大きな龍が高い声で鳴くと、違和感が……。

 そう思っていると、龍の身体がみるみる縮んで、本当に小鳥の姿になってしまった。

 俺が手を前に出すと、文鳥みたいになった龍が俺の人差し指にちょんと乗った。

 龍のまん丸い目と目が合う。


「もしかして、一緒にきてくれるのか?」


 まだしゃべれない龍は、つぶらな瞳だけで「そうだよ」と伝えていた。


《 あなたは龍の生誕に深く関わりました。あなたが死ぬまで、龍はあなたを守り、あなたが命じたことに全て従います。気をつけて育ててください 》


 マジか……。


「連れ歩くなら、ラファエラって呼ぶのはマズいな。王女とのつながりを疑われて面倒になるかもしれない。うーん、あだ名みたいな感じで、これからラフィって呼んでもいいか?」

「ピッ」


 小鳥は元気よく返事した。



「……深刻な場面だから黙っていたけど、私、何だか壮大な浮気現場を見せられた気がするの……」


 振り返ると、ナディアは目と鼻を赤くして、ハンカチで目元を拭っていた。言っていることと表情が合っていない彼女を見るのは珍しいなぁ。


「ピ?」


 ラフィは首を90度曲げて不思議そうにしている。


「えっと、この子は王女と繋がっているけど、別の存在なんだ。まだ生まれたてで何も分かっていない。可愛がってくれると嬉しいかな」

「……そうね。私も小鳥に嫉妬するのはやめとくわ」


 ナディアがラフィの首元を撫でると、小鳥は気持ちよさそうにしていた。

 ちゃんと育てないと。リヴァイアサンみたいな変な龍になったら大変だからな。


「さて、一旦、休憩にしないか? 徹夜で移動して、強敵と戦ったんだ。疲れをとった方がいいと思うぞ?」


 レオに言われて、その日は街に部屋を借りて休んだ。




《 セリム・ベルクマン 男 16歳 》

《 求道者Lv: 99 次のレベルまでの経験値:----/---- 》

《 MP: 2844 / 8725 治癒スキル熟練: 7023 聖属性スキル熟練: 2791 》


《 スキル 》

《  治癒 》

《   簡易治療…小さな切り傷やすり傷を治す 》

《   体力支援…闘病中の相手に体力の支援をする 》

《   免疫操作…免疫で抵抗可能な病気を治す 》

《   並行操作…免疫操作を7名まで同時にかける 》

《   再生治療…あらゆる身体の損傷を治す 》

《  聖属性 》

《   神眼…聖属性と闇属性を知覚する 》

《   聖鎖結界…闇に近い敵を捕縛し、継続ダメージを与える 》

《   聖守護結界…味方にかけると、あらゆる闇属性の攻撃を無効化する 》

《   浄化…悪魔の力の温床となる闇の穢れを消し去る 》

《   天声…闇に傾きかけた人の目を覚ます 》

《   聖なる開花…使用者の周辺に花を咲かせる 花の付近の人間は絶望から守られる 3日程度の持続効果あり 》

《  森林浴…植物から余剰の生命エネルギーを受け取り、空腹を満たす 僅かだがMPも回復する 》

《  海水浴…海から余剰の生命エネルギーを受け取り、空腹を満たす 僅かだがMPも回復する 》

《  生命の輪…あらゆる生き物から余剰の生命エネルギーを受け取る 》

《  称号授与…対象にふさわしい役目を自覚させて強化する。対象にふさわしくない称号を与えることはできない 》


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