公子、王女とお茶を飲む

 ラファエラ王太子に面会を申し込むと、翌日の午後に王宮に来るように言われた。

 行ってみると、宮殿の庭に、ちょっとしたお茶会の用意がされていて、王女と一緒に、国王が現れた。

 慌てて礼をすると、


「気にせずくつろいでくれ」


 フランクに席を勧められた。

 席に着くと、宝石細工のようなケーキや焼き菓子が、テーブルの上に並べられていった。透明なティーポットに入った、鮮やかな花が浮かぶお茶を侍女が運んでくる。


「セリム公子が来ると聞いて、ラファエラが茶を選んだ」


 これ、王女の好みなのか。調度品もお菓子もお茶も、何ていうか、意外と可愛らしい趣味なんだな。

 俺がティーカップに口をつけるのを見て、王女が頷いた。


「やはり公子は、こういうデザインも似合って良いな」


 ああ、カップもテーブルクロスもピンクの花柄だから、うちの父親とかに参加させたら大事故だろうね。


「しかし、学園ではうちの娘をおさえて、対抗戦の1位を取り続けているとか」


 ふんわりした流れなのかと思っていたら、横から国王にどすっと一撃やられた。


「あれは、たまたま、仲間に恵まれたのです」

「ふん。まあ良い。それで、今日娘に会いに来た、用件は何だ?」


 国王に言いに来たのではなく、王女に頼みに来たのだが。ここで言うしかないか。


「教会を大調査されているとか。気になることがあるので、私も一度、王都教会の内部を見てみたいのです」

「ほう。公子は、今回の事件の直接の被害者だったな。だが、教会については、問題が大きくなり過ぎた。処分を決めるまで、情報の流出を抑えたいのだ」


 案の定、国王は外部貴族が教会に絡むのを嫌がった。


「そこを何とか。私1人だけでも、教会内部を見せていただけませんか?」

「そうだな……。公子は治癒術士だったな。教会が秘してきた治癒魔法に興味があるのか」

「それもあります」

「公子の治癒能力は、聖王国に1人だけいる、あらゆる怪我と病を治す術士にも並ぶとか。その力、この目で直接見てみたい」


 王が言うと、すぐに奥にいた召使が反応して、1人の杖をついた男を連れてきた。準備がいいな。最初から俺を試すつもりだったんだろう。


「その男は、左足を魔物に食われた。だが、今も騎士団の中隊長として活躍してくれている。もし足さえあれば、王国のためにさらに力を発揮してくれるのだが」

「治しましょう」


 俺が立ち上がると、近くで見ようと国王も席を立った。


《 大怪我の再生治療をしました 経験値が上がります 経験値が+1000されました 》

《 現在のレベル:70 現在の経験値:3550/7100 》


「すごいな。見る間に再生した。奇跡のようだ」


 感嘆する国王の後ろで、周囲にいた者たちもざわついていた。俺が治すのを直接見た者は少ないからなぁ。


「ありがとうございます」

「教会を調べるのを認めてやる。ただし、公子1人で。案内と護衛は、王家から出す。ラファエラ、そなたがついていってやれ」

「かしこまりました」


 教会に入る許可が出た。これで内部を調べられる。


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