公子、秋の遠足に行く2

「レヴィテート、ウィンド!」


 浮遊魔法と風魔法を使って目的地へ急ぐ。


 遠目にドラゴンと戦う人影が見えてきた。

 クリスタルの剣を持ったナディアだ。

 ナディアの姿勢がおかしい。彼女は左腕を失っていた。


「ナディア!!」


 彼女に襲いかかるドラゴンの爪を結界で防ぎ、抱きつくように接近して、すぐに<治癒スキル>を発動した。


《 大怪我の再生治療をしました 経験値が上がります 経験値が+1000されました 》


「うそ……腕が……」


 ナディアがやられた理由は、足場の悪さだろう。

 ちょうど、崖の上の細い道を歩いていたときに、襲撃されたようだ。


「レヴィテート!」


 俺はナディアと、近くにいたパメラとジュリエッタに、浮遊魔法をかけた。

 さらに、空中に結界でいくつもの足場を作る。

 これで、一方的な戦いにはならないだろう。


「少しの間、ドラゴンを抑えていてくれ。他に重傷者がいないか見てくる」


 遠目に、かなり血を流している者が見えた。すぐ行かないと、危ないかもしれない。


 崖の下で、倒れている生徒を発見した。即死に近いが、まだ息があった。治癒すると、MPをほとんど持って行かれた。


《 瀕死の人間の再生治療をしました 経験値が上がります 経験値が+1500されました 》

《 現在のレベル:68 現在の経験値:6480/6900 》


「<森林浴>!」


 山の木々からMPを補充する。量はあまりとれないが、これでまだ動ける。


「他の者の怪我は、ちょっと待たせるくらいは大丈夫そうだな」


 浮遊魔法で飛び上がり、ナディアたちのところに戻った。


「<聖鎖結界>」


 ドラゴンに<聖属性スキル>を使ってみるが、効果はなかった。やはり、悪魔とは関係のない、ただのモンスターだったようだ。


 ナディアたちが善戦しているので、俺は少し後ろで補助魔法をかけ、追加の足場を生成していった。


「もう少し耐えてくれ。レオが来れば勝てる」


 このメンバーだけで勝つのは、少し厳しい。平地で戦って、万全の俺がナディアをフォローすれば勝てると思うが、やりにくい空中戦だ。その上、俺はMPが枯渇しないように注意しながら、<森林浴>で補っている状態だ。

 レオの位置からも、信号弾は見えただろう。すぐに来るはずだ。


 数分耐えるのが、何時間にも感じられた。

 やがて、ドラゴンの背後に人影が見えた。


「レオ!」


 猛スピードで飛んでくる、レオの姿に釘付けになった。まさしく主人公の登場の仕方だ。

 彼は俺の作った足場で跳躍し、ドラゴンの真上をとると、敵の背に剣を突き刺した。


「フリーズ」


 暴れるドラゴンの翼を、ここぞとばかりに凍らせてやる。

 ドラゴンはそのまま崖の下に転落した。

 レオは浮遊し、上空から爆撃魔法を使う。

 ナディアたち3人も、それに合わせて全力で魔法を放った。


 煙が晴れると、ボロボロになったドラゴンが倒れて死んでいた。

 これじゃ、1周目と違って、あまり良い素材が取れないな。

 前世が上手くいきすぎていたのか。今回は足場の悪いところで急襲されて、被害が拡大した。


 俺は、避難した生徒を探すことにした。

 手遅れの重傷者がいないことを祈るばかりだ。


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