パレット
冬結 廿
第1話
羨ましかったんだ。常に。自分より体が強くて、外でいろんな友達たちと遊べるのが。お家に帰ったら親がいて、兄弟がいて、温かいご飯があって。
...そんな凡庸で特別でもない願いは自分には叶えてもらえることはないらしい。
「佐藤様ー。入りますねー。」
そんないつもの腑抜けたような看護師の声が聞こえて来る。と、同時にこの病室の部屋が開けられる。
「あのさ。いつも言ってるじゃん。
「ごめんなさいねー。もう苗字で呼ぶのに慣れちゃったからー。」
「昨日も聞いたよ。...いつになったら名前で呼んでくれるの?」
「うーん。いつになるんでしょう。...はい。本日の朝食です。」
「ん。ありがとう。
「そういえば今日は定期検診の日でしたねー。前より状態。よくなっているといいですねー。」
「...そうだね。」
「..............」
「..............」
互いに無言が続く。それもそのはず。僕にかかった病はこの一番大きな病院の医者でも見たことがない、新種の病気らしい。これからどうなるかもわからないし、どうすれば生きれるかもわからない。
...そんなお先真っ暗な病気なのだ。
だから看護師にとっても元気づけるような声をかけるのがとても難しいんじゃないかなと思っている。
正直言って、僕はもう半分諦めていた。
...でも。でも。もし。自分がこんな病気にかかっていなくて、自由な生活ができたら...と。そんな空想を広げながら朝食を食べる。味はいつもより薄い。
「ごちそうさまでした。」
「...お粗末様でした。ではいきましょうか。...動けますか?」
「は...はい。一応。」
そう言って、
...そうして。2時間半にわたるいろんな診察を終え、調査結果を待っていた。
すると、別の診察室から、
「おはよー。
「そう。今までよりいろんな機械に通されて、2時間以上もかかってるよー。」
「そうなの!?頑張っているのね...。ま、まぁでも未確認の病気だしね。いろんな検査しないとだし。」
「...あとは、未来でこの病気にかかった人のためだって。今の僕はどうなるんだって言いたいけど。」
「大丈夫よ。私はいつでも君の味方になってあげられるから。」
「うん。ありがとう。...あ、呼ばれた。行ってくるね。」
「うん。また後で。」
そう言って彼は診察室へ入っていく。それを見た後。すぐに...
「
「お母さん。呼んでるよ。」
「あ、あぁ。わかっているって。」
そんなお母さんの不安そうな顔を見て、私も少し不安な気持ちに包まれた。
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