ソロよりも、バディ!

ヘパ

第1話 ソロよりも、バディ!

 間違っても、アポロンに、『ピアノ教えてー?』なんて、言っちゃいけない。


口にしたら最後。鬼教官おにきょうかんアポロン先生の、もうレッスンが待っている。



 目の前で、アポロンが、優雅ゆうがに、バラード1番を、弾きたおすもんだから、俺は、つい、言ってしまった。


「アポロンちゃんみたいに、弾けたらいいのになー。おそわりたい……。」


「ヘパイストスが、そう言うなら!」って、アポロン先生のスイッチを、入れてしまった。



 練習は、アポロン先生の、OKが出るまで、つづく。



 バラード1番の最後が、めっちゃ難しくて。


もう、何十回も、弾いてるのに、弾けない……。



 レストランが準備中だから、今は、1階のピアノで、練習してるけど。


このままじゃ、お店、いちゃうよー!



 突然、お店のドアベルが鳴った。


けこんできたのは、プロメテウスおじさん。


「あら!プロちゃん!いらっしゃい!」と、海のレストランの、おねぇ系ウエイター・アルゴスが、出迎でむかえる。


「ねぇ!ダイちゃん、見なかった!?」って、プロちゃんは、超あわててた。


さっき、街で。ダイダロス先生、見たよ!って、話したら。


「サンキュ!」って、プロちゃんは、お店を、飛び出してった。


「プロちゃん、元気いっぱいね!」って、アルゴスは、笑ってる。



 プロちゃんと、ダイちゃん。いったい、どんな、ケンカしたんだろう……。


ダイちゃんは、超ぶちキレながら。


『プロメテウスって、だれ?知らねーな。バディ解消かいしょうだ!俺は、今日から、ソロデビューだ!』って、新しい家を、探してた。


「なにがあったの?」って、きいたけど、「言えない。」って、ダイちゃんに言われたから、真相しんそうは、不明……。



 言えないって、なに!?


そんなに、やばいこと、あったのか!?



 ふたりのことが、気になっちゃって、ピアノの練習に、集中できない……。


 アポロン先生に、怒られた。


「俺が、教えてるんだからさー。まじめにやれよ、ヘパイストス。」


「ねぇ、アポロンちゃん。ダイちゃんと、プロちゃん、このまま、バディ解消しちゃうのかな?」


「ヘパ、あいつらの、心配してんの?大丈夫、大丈夫。夜には、けろって、仲直りしてるから。バディのきずなは、そんな簡単に、切れるもんじゃないから。」


「ほんとに?」


「他のやつら、見てみろよ。ケンカくらいで、バディ解消してるやつ、いないだろ?」



 言われてみれば……。


ハデス伯父おじさんと、クロウ。秒で、ケンカ、はじめるけど。秒で、仲直りしてるな。


アレスも、どんなに、危ない目にあっても、探偵のトリトンと、いっしょにいるし……。



「誰だって、ひとりより、ふたりの方が、いいに決まってるじゃん。ヘパと音楽できて、俺、たのしいよ。ずっと、ひとりで、ピアノ、弾いてきたからさ。」


「アポロンちゃん、なんで、いままで、誰とも、バディ組まなかったの?アポロンちゃんなら、いろんな人に、声かけられたんじゃない?」


「まぁね。でも、興味なかった。ヘパ以外に、バディ組みたいやつ、いなかったし。もしも、ヘパが、一生、魔法つかえないなら。俺は、一生、ひとりで、いるつもりだったよ。」

 


 「さぁ、店、開けるから!つづきは、上でやって!」って、アルテミスに、言われちゃた。



 2階の防音室に、うつった途端、さっそく、アポロン先生は。


「はい。それじゃあ、レッスン再開しますか。」


「先生、休憩きゅうけいなしですか!?」


「休憩だぁ?てめー、その言葉は、Presto con fuoco《プレスト コン フォーコ》を、激しく、弾けるようになってから、言え!俺が教えるからには、中途半端で、おわらせない!」



 そして、アポロン先生のレッスンは、俺の門限、ギリギリまで、つづいた。



 ちなみに、帰り道。


オープンカフェで、プロちゃんと、ダイちゃんを、見かけたんだけど。


ふつうに、仲良く、ごはん食べてたよ。


やっぱり、バディだねー!

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