異世界転生しましたがバンド活動しようと思います。

稚爺 (ようじぃ)

転生ってやつ

第1話 Smells Like Teen Spirit…NIRVANA

「ありがとうございました!!」


高校生という短い間に、何かを成すには才能が少なすぎた。

少なくはない拍手と歓声が収まるとともに俺の青春も終わったのだと思う。


特段音楽の才能に恵まれた訳ではないし、良くいえば器用貧乏で高校3年間のバンド活動は終了した。どこかで偉大なるミュージシャンに憧れを抱いていたし、実際27歳の今でも糞みたいな生活をしながら、バンドをやっている。


それも今日で終わりだ。


Kurt Donald CobainもJimi Hendrixも27歳で死んだ。

もうそろそろいいだろ。滞納した家賃や止まった電気、水道に悩まされる必要もない。高い高いビルの屋上から――


♪a denial, a denial, a denial, a denial, a denial♪


「人生さよなら!」


■ ■ ■ 


「ルーカス!!大丈夫か?」


知らない天井と知らない欧米イケメン。

そして、死んだはずの俺。


「誰?」

「父ちゃんの名前忘れたのか!?」


イケメンは涙目になってもかっこいいんだな、なんて呑気なこと考えながら周囲を見る。金髪碧眼イケメンがこちらを見ているではないか。

あんな顔に生まれたかった。


「鏡をまじまじ見てどうしたんだ?ルーカス」

「え!?あれが俺?」


どう見ても俺の顔じゃない。俺の顔はもっと平で一重で浮腫んだような顔だ。


「スキル取得した瞬間に倒れたんだぞ?覚えてるか?」

「お、思い出せそうな気がする。」

「まあ、今日は寝てろ。俺は仕事行くからな。」


段々この身体の記憶を取り戻していく。すきる ?っていうのは女神さまから与えられる力らしい。


そうだ!

俺は15歳になったから教会に行って…


「ステータスオープン」

ルーカス・マクゴナガル

種族:人族

年齢:15歳

すきる:「音楽 Level.1」

持ち物:女神からの手紙★


「女神からの手紙?」


ポンっと言う音と共に手紙がヒラヒラと落ちてきた。


ールーカスさんへー

あなたの前世での行いを私は見ていました。正直残念です。一途に音楽を愛していたのに何もなし得なかったまま死んでしまうなんて。成功しないから命を断つのですか?27歳はそんなにかっこいいものですか?

貴方の魂を此方に呼び寄せ転生させたのは私です。この国には音楽がクラシックしかないんですよ。音楽の神として非常に不味い事態なんです。貴方には地球の音楽を此方で広めてもらいたいです。もう一度夢をみてみませんか?

貴方のすきるは、特別性です。是非使いこなしてくださいね♡

ステータス画面のすきるってところに触れてみて!!


ー音楽の女神よりー


「どうすりゃいいんだよ。っていうか、途中から女神様口調砕けすぎじゃない?」


頭を掻きながら、「すきる」というのに触れてみる。


「音楽 Level.1」・・・歌唱力上昇、楽器製造、音感、楽器演奏力上昇


ボッと急に女神様からの手紙が燃えてしまった。


「うわっ!?」


まあ取り敢えず、すきるの楽器製造というのを使ってみるか。この世界には魔力と呼ばれる不思議な力が存在する。その力を現実世界に現象として出すものがすきるだ。


胸の中心辺りに感じるモワッとしたものを大きくする。そうしながらアコースティックギターをイメージし、


「楽器製造…アコースティックギター!!」


体から魔力が外に出され、ポッと可愛らしい音とともにギターが出現する。ちなみに今回はYA○AHAだ。


「おお!!凄い。なんとなくで、すきるを使えるんだなぁ。」


早速、ピックもすきるで作って弾く。

とても弾きやすい、この世界初のギターの音色は何処か寂しく希望に満ちた音。


ガタッという音に窓の方へ目をやると可愛らしい女の子が見ていた。


「なにそれー!?」


彼女はシーラという一個下の女の子だ。町のみんなは将来美人さんに絶対なると口を揃えて言うほど可愛らしい子だ。


「ギターっていう楽器だよ。」

「西の方の民族楽器だよね?」


実を言うとクラシック以外にも音楽ジャンルがこの世界にも多い。ただクラシックは貴族御用達とあって、他の音楽より地位が高い。


民衆に音楽などの娯楽を楽しむ余裕や趣味を持つ余裕は少なく、そんな事をするなら土いじりや訓練に費やしたほうが有意義と思う人が多いからだ。


「シーラもやってみる?」

「うん!!」


僕より小さい手でギターを手に取り、開放弦を鳴らす。誰にも邪魔されないどこまでも純粋な音。


「うわぁぁぁーー!?鳴ったよ!!」

「楽しいでしょ!!教えてあげようか?」

「おしえて!!」


シーラはセンスがあるようで教えた事をどんどん吸収していく、コードやドレミ。流石にFコードを2回目で押さえられるようになったのはびっくりした。時間を忘れて僕たちが窓をみるともう外は茜色。


「ねえ、ルーくん。明日も教えてね!!」

「もちろんだよ。」


シーラがルーカスの楽器を弾く姿をみたことが運命が変わる瞬間だったのは言うまでもないかもしない。


***あとがき***

読んでくださり、ありがとうございます。

1話毎の題名は実際にある曲です。聴いていただけると本望です。音楽好きになっちゃいましょう!!(*^^*)

誤字や誤った知識などがありましたら、ご指摘頂けると嬉しいです。

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