学歴が小卒未満の最強魔法使い〜俺を追い出した母校に【教師】として舞い戻ったら落ちこぼれ美少女が【最強】に。そして元担任の先生は【ブタ箱】行きに〜

シャナルア

第1話 学歴が小卒未満の最強魔法使い、教師として母校に舞い戻る

「6年生、ツクモ・イツキ。今日でお前を退学処分とする」


「あ……ああ……」


 学校で一番偉い大人の男――校長の言葉を聞いた僕は膝が崩れ落ち、地面にうずくまった。


「この偉大なるラクロア魔法学園初等部にて、何一つ魔法を身に着けられず、あろうことか同級生への暴力行為を働いた。お前はゴミだ。この学園の敷居をまたぐ資格はない」


 まるで死刑宣告を受けたような絶望感。


 ぎゃははははははははははは!


 僕の同級生全員が、うずくまる僕を見て笑い声を上げていた。


「早く立って帰れ!!!」


 校長に怒鳴られ、なんとか立ち上がる。


 立ち上がると、一人の女性が歩いて僕の前に来た。


「ツクモくん、残念だったわねぇ。あと半年で卒業できたのに」


 担任だった女教師、グレゴーラ・カズール先生が満面の笑みで僕に言った。


***


 僕は学校から逃げるように出ていった。


 自分の腕で、血だらけの死んだうさぎ――僕の友達を抱きしめたまま出ていった。


 そして出ていった後、道端をうずくまっていた。


「君は何してるの?」


「……だれ?」


「ただの旅人さ」


 背の高い、スタイルのいい女性から話しかけられた。


「その、血だらけのうさぎはどうした?」


 僕はその女性をよく見る。


 美しく長い髪、キリッとした瞳、大きな胸、動きやすくしてるのか露出が多いワイルドな服、きれいよりかっこいいが似合いそうな女性だった。


 僕を思いやる様子で見つめていた。


 僕は、こんな優しい表情を本当に久しぶりに見たと思った。


「……ココア……このうさぎは僕のたった一人の友達だったの」


 僕はその女性に、僕の無念を打ち明けた。


「僕は魔法が使えないから、学校のみんなと先生達からゴミだって言われててね。だからうさぎの飼育小屋でよくココアと遊んでたの。そしたら――」


 僕はこの言葉に憎悪を込めていた。


「ココアが学校のみんなに殺された! 僕と仲良くしてただけなのに! 僕は怒りに身を任せてそいつらに殴ったら、全員から魔法で滅多打ちにされて! そしてそれをグレゴーラ先生は満面の笑みで見続けてこういったんだ。『クラスの友達を傷つける君はゴミだ。学校にいる資格がない』って!」


 その後すぐに、グレゴーラ先生から校長へこのことを報告され、その場で処罰を受けた。


「あいつらは無実になって全部僕のせいにされて! 退学させられたんだ……」


 涙が止まらなかった。


 その女性はそんな僕を抱きしめた。


「神級魔法リザレクション。……大丈夫、君の友達は今生き返った」


「え?」


 抱きしめたココアから鼓動を感じる。


「怪我もない……。ほんとに生き返ってる!」


「なあ、君の名前は?」


「ええと……! ツクモ・イツキです!」


「ツクモ、私の弟子にならないか?」


「え……」


 意外な提案に、僕は驚いた。


「私がツクモに魔法を教えたら、最低でも勇者パーティーに入れるくらいには強くなれるさ」


 そう、10年前の僕は、最高の師匠と共に過ごし、その言葉の通り、勇者パーティーに入れるくらいの実力を身に着けた。



〜10年後〜



 俺は竜の勇者と呼ばれる実力者、勇者ジャジャのパーティーの一人として働いていた。


 勇者ジャジャは戦士にしては細身だが、屈強な肉体を持ち、さらに自身の体よりも大きい――使えば死ぬと言い伝えられている伝説の魔剣リベリオンを扱える実力者だ。


 がしかし、


「ゴミツクモ、てめーは今日からパーティーを抜けろ」


 勇者ジャジャは、俺を人気のない街のハズレに呼び出し、そういった。


 人生で2度目の追放だった。


 まあ、1度目があまりにも衝撃的過ぎて、ショックなんて殆どないのだが……


「一応理由を聞かせてもらってもいいかな? 俺はポーターとしてこのパーティーに大きく貢献してきたと自負しているのだが?」


 俺は本来、魔法使いだが、ジャジャのパーティーにはすでにその役割の男がいるため、ポーター(必要な道具を持ち運ぶ役割の者)兼雑務を務めていた。


「ああ?? 単なる荷物運びが貢献だぁ??」


 心外かつ、汚い物言いだ。


 この勇者は実力だけはあるものの、人としての礼儀は何一つない。


「単なる荷物運び扱いか……それだけすればいいなら俺はどれだけ楽できたことか」


 この勇者ジャジャのパーティーには、俺を除いて、ジャジャと他2人いるが、全員馬鹿だ。


 裏で俺がアイテムを厳選し、作戦を立て、冷静な判断でサポートを行ってきた。


 それが無ければ、とうにこのパーティーは終わってたことだろう。


「てめーはこのパーティーの空気を悪くすんだよ。最強の勇者であるこのジャジャに逆らいやがって」


「逆らってない。俺はこうするべきと意見を伝えただけだ」


「は? その物言いさ、俺とやっていけねえって言ってるのと同じだぜ?」


 ちなみに俺は、その言葉をまるで口癖のように何度も吐かれたため、慣れていた。


「そーそー、うちらもさ、あんま雑用係に馴れ馴れしくされると腹立つじゃん? ってゆうかマジ超うぜー!! きゃは!」


 勇者パーティーの前衛タンク職、派手な格好の女性、パラディンのラズビィはそう口を挟んだあと、手鏡を見つめながら化粧直しの続きを始めた。


「正直わしは、お前がなにかの役に立つところなんて見たことない。中立の立場からみて勇者の言うことがすべて正しい。恥を知ったほうがいいぞ若者よ」


 勇者パーティーの後衛援護職、背の低く長いひげの老人、魔法使いのガートルはそう俺に忠告した。


 無論そんな訳はない。


 彼らがピンチのときは回復アイテム、各種補助魔法でサポートしたり、戦闘に巻き込まれた人がいれば助けたりしていた。


「それはお前らが、ただ前だけ向いて、突撃しかしてないからだろう……」


 そう突っ込むも、ガートルの耳が遠いのか分からないが、無視された。


「はっきりいう。俺様の命令も聞けないようなお前はこのパーティーには必要ねえ」


「……はっきり言ってくれてありがとう。言う通り、このパーティーから出ていくことにするよ」


 正直言えばこの時が来るだろうことは予想していたことだ。


「君たちの荷物はいつもの宿に置いておく。それじゃあ――」


「まて、話はまだだ」


 呼び止めたのはジャジャだった。


「まだあるのかい?」


「――ラクロア魔法学園」


 その言葉を聞いた瞬間、俺の小学生エレメンタリー時代の記憶が呼び出された。


 胃から喉元までやってくる吐き気をなんとかこらえる。


「……なぜその名前が……?」


「てめえにはその学園の初等部で、臨時教師をやってもらう事にした」


「……なに?」


 ジャジャ、ラズビィ、ガートルの3人はニタニタ笑っていた。


「そこには知り合いがいてな。お前のことを聞いたんだよ。最低最悪の落ちこぼれ、ゴミ、最終学歴小学校エレメンタリー中退なんだってな! ぎゃははははは!!」


 俺は過去に、壮絶ないじめを受けた。


 魔法が使えないことから、クラスの晒し者として、担任のグレゴーラが散々俺を吊し上げた。


 そしたら徐々に、クラスメイトも、それ以外の学年の奴らも、大人たちも俺を罵倒し、暴力行為を働いた。


 生き地獄だった。


 師匠に出会わなければ、俺は自らこの世を去ったことに違いない。


 ――今の実力を身につけることなくだ。


「わかった。ラクロア魔法学園で働けばいいんだな」


「……ああそうだが」


 俺の態度を見て不機嫌そうな勇者ジャジャに、背を向けた


「ありがとう。自分の過去と向き合うチャンスをくれたことに感謝する」


 俺は準備を終えたあと、忌まわしき学園へと足を向けた。


***


「ラクロア魔法学園初等部、10年ぶりだな……少し見た目が変わってるな」


 ラクロア魔法学園は初等部エレメンタリー中等部ジュニア高等部ハイの小中高一貫の魔法学校だ。


 俺は校門の前に立ち、改築されたように見える初等部の校舎を見てつぶやいた。


「まあお待ちしてましたわぁ。ゴミ――いいえ、ツクモ先生」


 俺を見て、そう話しかけたのは、体格がゴツく、きつい化粧の、かなりおばさんくさい感じの女――元担任の先生だった。


「お久しぶりです。グレゴーラ先生」


「あのツクモくんがこんなにも大きくなってびっくりだわぁ! 私の教育の賜物かしら」


「ええ、10年前はどうも――」


 ぶちころすぞくそばばあ、という言葉が喉まででかかるが、あまりにも低レベルなので我慢した。


「ツクモくん、不機嫌そうな表情よ」


「……そうですか。それがなんでしょうか?」


「それもそうわよね……実は私ね。あなたを退学に追いやってしまったことを悔やんでるの」


「は?」


 聞き間違いかと思うくらいには、素で驚いていた。


「たったのあと半年で卒業出来た――その半年は大人ではそう大した事なさそうでも、子供だったあなたにとってはとても大事な時間だった」


「はぁ……」


 むしろ、師匠と過ごした時間のほうが俺にとっては大切なのだが。


「だからね、この失われたあなたの半年を返してあげたいの」


 グレゴーラ先生は、薄気味悪い笑顔でいった。


「もちろん、半年後もこれから先も、ずーーーーっと。あなたのことを昔と変わらず……いいえ、昔よりも徹底的に可愛がってやるわぁ……ゴミ」


 ゴミ、という言葉だけは、俺にだけ聞こえる小さな声だった。


 正直なところ、グレゴーラ先生が何も変わってないことに俺は安心感を覚えていた。


「それから、今日は私率いる6年1組副担任のユウ・ミサキ先生に校舎を案内してもらってください。そして明日からGクラスの担任として授業してもらうのでよろしくおねがいするわね」


「Gクラス?」


「落ちこぼれのGゴミクラスってことよ」


「そうか」


 俺がいたときは、Gクラスというものはなかった。


 俺が出たあとに新しくできたクラスなのであろう。


 おそらくこんなクラスを作ったのは、グレゴーラに違いない。


「よ……よろしくおねがいします、ツクモ先生! 6年1組の副担任のユウです」


 メガネを掛けた、少し小柄な女性がグレゴーラ先生の後ろから出てきた。


 目立つグレゴーラ先生に比べ、影がうすそうな印象だ。


 だが悪くない印象だった。


「こちらこそお願いします、ユウ先生。――それからグレゴーラ先生、一言いいですか?」


「ええ、何です?」


「そのGクラスの生徒、俺が最強にしてみます」


「……なにぃ?」


「結果を出したほうがいい先生、結果が出なけりゃ悪い先生。どっちが上と下なのかはっきりさせましょう」


  ピキピキピキ、グレゴーラ先生の血管があまりの怒りでくっきり浮き上がる。


「そうねえ、なら月末、クラス別の魔法対抗戦で決着をつけましょう。負けたら、わかってますわよねぇ?」


「望むところです。グレゴーラ先生」


 そして俺は学園へと足を踏み入れた。


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