王子を思う手紙

仲仁へび(旧:離久)

第1話




 ごきげんよう第一王子(笑)


 邪魔な平民の女がいなくなって、さぞかし楽しい毎日を贈っているのでしょうね。


 きっと婚約を破棄した後、田舎臭さに悩まされることもないですし、どんくささに煩わされることもないのでしょう。


 これに懲りたら、気まぐれでただの平民の女性に手を出さない事ですわね。


 どうしようもない私のような平民馬鹿がうつってしまいますわよ。


 ああ、そうそう。


 両親に挨拶もせず、拉致同然に王宮へ連れ帰った哀れな平民女は、日々慎ましく幸せに生きておりますわ。


 身の丈にあった男性と結婚して、広いお家で暖かな家庭を気付いておりますの。


 よかったら、暇なときにでも遊びにいらしてくださいな。


 まあ、貧乏くさい場所が嫌いな王子には、一秒もいられないかもしれませんが。






 俺は、数か月前に婚約破棄した平民女からの手紙を握りつぶした。


 目の前に立つ、隣国の王子が首をかしげてくる。


「どうかなされましたか。手紙の主が何か失礼を」


 俺は、友人にする人間はよく選んだほうが良いと忠告してやった。


 どうやって取り入ったのか、やつは隣国の王子と仲良くなったようだ。


 しかし、どうせただの虚勢だ。書かれているのは出鱈目に決まっている。


 なぜなら俺は、あの女に一銭も持たせず、着の身着のままで国から追い出したからだ。


 運良く生きていたとしても、その日暮らしがやっとだろう。


 そう考えていると、隣国の王子は「裏にも文章がつづられているようですよ」と言った。


 俺は、手紙をひっくり返す。





 可哀そうな第一王子。


 これまでにあなたが行ってきた数々のありがためいわ、ではなく親切な行為は様々な人達に教えておいてあげたので、もう見た目の良さを評価して持ち帰った平民女に不快な思いをさせられる事はないでしょうね。


 どうか私の夫から叱られておいてくださいね。





 手紙を読み終えたとたん。


 隣国の王子が剣をつきつけてきた。


「お前は王失格だ。貴方の父王にも話をつけてきた。着の身着のままで国外へ出てもらうぞ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

王子を思う手紙 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ