第51話『ギルド嬢のお迎え』【二人の娘編】
「うーん。今日も良い朝だ。気分が良い」
起きたら気持ちの良い日差しが差していた。ガラスが割れていたが、おそらく野鳥か何かがぶつかったのだろう。宿屋のおかみさんに伝えておいた。
「おはようございます。ポルカさん」
宿の前に迎えの馬車が。馬車通勤なんて、なんだかちょっとした夢見たいな話だ。
(待遇の良い仕事をくれたソフィアさんには感謝しなきゃ)
こんどお礼にちょっと高めのお菓子でも持っていこう。そんなことを思いながら馬車に乗った。
「今日も張りきっていきましょう!」
そういえば、ソフィアさんは私につきっきりで大丈夫なのだろうか? 率直に疑問だったので聞いてみた。
「大丈夫ですよ。職場行っても私、窓際なんで仕事ありませんし」
「あ……。そうですか」
なんか、闇を感じたので深掘りして聞くのをやめた。どんな仕事でも色々な苦労はあるのだなぁ……私はそんなことを感じるのであった。
「ポルカさん今日の新聞読みました? 通り魔ですよ。通り魔!」
「……通り魔ですか。……物騒ですね……」
「ええ。全身滅多刺しだったみたいで。当の本人も、犯人の顔に記憶がないの一点張りで、迷宮……いえ、ダンジョン入りしそうな感じです」
(別に、そこは普通に迷宮入りでよくないかな?)
そんなことを思った。それにしても通り魔事件とは……。ポークルの里を出て、この街で1年。そんな物騒な話はなかったのだが……。
「被害者の方は助かったんですか?」
「はい。奇跡的に助かったそうですよ。何十箇所も刺されても死なないとか、人間の生命力って驚くべきですねぇ」
「ですねー」
まあ、恐ろしい事件ではあったが、被害者の方が無事なようで安心した。……この件とは関係ないのだけど、ちょっと気になることがあったのでソフィアさんに質問してみた。
「そういえば朝起きたら部屋の窓が割れてたんですよ。たぶん野鳥のせいだと思うんですけど」
「ああ……。機能は満月の夜でしたから、鳥も人もちょっと気がおかしくなってたのかもしれませんね」
「なんか聞いたことあります。満月の夜は魔物とか凶暴になるって話ですよね」
「みたいですね。……なので、月の夜はルナティック。狂気の夜って呼ばれるようになったみたいですね」
満月の夜になるとテンション高くなるのは、人も鳥も魔物も一緒ということなのだろう。私もいち冒険者として、月の満ち欠けには気を配らなければなぁ……。そんな風に思い知らされた。
「あっ、そういえば部屋に茎が散らばっていましたがこれも満月と関係ありますかね?」
「茎、ですか? いや、茎は関係ないんじゃないでしょうか」
茎は関係なかった。
そんなこんな話しているうちにダンジョンの前に辿りつくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます