ヒロイン達が俺のソロ焼肉を邪魔してくる
ムネミツ
ヒロイン達が俺のソロ焼肉を邪魔してくる
俺はソロ焼肉が好きだ、ミノ、タン、ロース、カルビ、様々な種類の肉を独り占めできるというのは何よりも気持ち良い。
子供の頃、家のすき焼きで肉の争奪戦とかした事のないお上品な家庭の人間にはわからない感覚だろう。
「あ~♪ 牛タン、うめえ~~~♪」
網の上で焼けた牛タンを箸で掴みレモン汁につけてから口に入れる。
俺は牛タンは歯ごたえが好きだ。
畳敷きの席に座り、ランチタイム一時間食べ放題と言いう至福の時間を過ごす。
「先輩、ラム肉も焼けましたよ♪」
可愛らしい美少女の声が俺の至福の時間を叩き割った。
「……え? 何で君が此処にいるの!」
「先輩のいる所なら私は九〇パーセントご一緒します♪」
いつの間にか、俺の向かいにピンクパープルな髪をした後輩の美少女が座ってラム肉を焼いていた。
さらに店の戸がガラッと開いて、凛とした美しい女性の声がした。
「……ふむ、良い香りだ♪ 店ごと買い取らせていただこう♪」
明らかに日本人ではないが日本語が堪能な青いスーツを着た金髪巨乳のお姉さんが入るなりとんでもない事を抜かす。
「出ましたね、金髪のヴィラン!」
ピンクパープルな後輩がぐぬぬと唸る。
金髪のお姉さんが俺達のいる席へとやって来る。
「やあダーリン、探しましたよ♪ ここが私達の千年王国です♪」
お姉さんが俺の隣に座ってもたれかかって来た。
「ちょ! 金髪さん、そこは私の定位置です!」
ピンクパープルが叫ぶ。
「お客様、店内ではお静かになさっていただきますようにお願いします」
金髪のお姉さんは凄い低いトーンの声で返事をした。
「取り敢えずお前ら、食うなら食えよ飯の時間なんだから」
俺が言うと二人は黙り、俺達は三人で黙々と焼肉を食った。
俺は次は別の場所で食おうと決心した。
何かバトルを始めそうな後輩とお姉さんからすり抜けて、俺は自分の分だけ
代金を支払って抜け出した。
「あ~、もっと食いたかったけどあいつらがいるとろくに食えやしない」
愚痴りながら走る俺。
「あら、貴方様♪ 丁度良い所で出会えましたわ♪」
俺の目の前に現れた第三の美少女、その名は武士っ娘。
黒髪ロングで平安時代のお姫様の様な髪型が特徴のおっとり美少女。
やはり胸は大きい、由緒正しい武家の家柄なお嬢様。
「いや、俺は特にそうでは」
無いと言おうとした所で武士っ娘の目がキランと光る。
この同級生、武芸百般なので素手でも武器を持っていても強い。
「さ♪ ご一緒にお昼をいただきましょう♪」
瞬時に俺に近づき腕を絡めて抱き着く武士っ娘。
傍目には仲の良いバカップルにしか見えないが、俺の腕は彼女に極められていた。
「わかった、ご一緒させてもらうよ」
俺は仕方なく、武士っ娘に引っ立てられて木造の古風な構えの店に連れて来られた。
「こちらの鴨うどんが、貴方様のお口に合うだろうと思いましたの♪」
店内からは出汁の香り、それと柚子の香りもした。
「あ、これは確かに俺の好みを突いてるな」
悔しいが武士っ娘の読みは正解だった。
「焼肉は一人でないと嫌だと聞いておりましたので、これならご一緒していただけるかなと♪」
「まあな、ありがとよ」
素直に礼を言う。
「うふふ、私は良妻賢母ですから♪ これであなた様を独り占めですわ♪」
あざといし悔しいが俺は武士っ娘に逆らえなかった。
「「ちょっと待った~~!」」
俺達の背後から二つの声が重なった、後輩とお姉さんだ。
「先輩、その人から離れて下さい!」
「貴様、ダーリンを返していただこうか?」
後輩がメタリックなパワードスーツを瞬時に身に纏い、お姉さんが騎士の姿に変身してと武装する。
「あらあら、邪魔はさせませんわ♪」
武士っ娘もいつの間にか赤い甲冑を全身に纏い両手で大太刀を握っていた。
女達が異能バトルを始める中、俺は逃げ出した。
「誰か、俺に一人で飯をくわせてくれ~~~!」
こうして、俺のソロ焼肉も昼飯もヒロイン達によって台無しになった。
ヒロイン達が俺のソロ焼肉を邪魔してくる ムネミツ @yukinosita
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