最弱な能力に異世界転生した僕こそが最強の勇者に間違いないっ!
ぴこたんすたー
第1章 勇者誕生の時
第1話 さようなら、そしてこんにちはの世界
『ガタンゴトン、ガタンゴトン……』
どこにでもいる冴えない18歳の男子高校生。
僕の名前は
今、穏やかだった夕刻に感情を揺るがす有り
僕の目の前で華やかな笑顔を見せていた彼女、同じクラスメイトの
その僕の足元から線路を周辺に、校内では健やかだった彼女のバラバラに朽ち果てた姿が目の前に無惨にも散らばっている。
岬代はこのような影のある自害行為とはかけ離れ、いつも明るく前向きだった。
そんな彼女が18歳の誕生日の今日に僕がいる無人のホームにて、列車に飛び込み自殺をするなんてにわかにも信じられなかった……。
『ガタンゴトン、ガタンゴトン……』
「一体、君に何があったんだよ」
緩やかにスピードを落として停まろうとする電車の音を耳にしながら、溢れる雫を手の甲で拭い去った僕は、彼女だった
──とは言っても体の損傷が痛々しく、
****
──季節は春、3月の初めでも夜更けはまだ冬のように肌寒い。
何十年も過ごしてきて見慣れたギラギラとしたネオンの街の片隅にて、彼女だったボールを抱きしめて唇をぎゅっと噛みしめ、顔が分からないよう、黒のパーカーに付いた帽子を深々と被る。
「──おい、アイツの持ってるの人の頭じゃないか!?」
「嫌だわ、殺人鬼だ。警察に通報した方がいい!?」
「いや、逆に
「じゃあ、どうしたらいいのよ!?」
時折、点滅する壊れかけた街灯の下で、寒さで身を震わせている僕に向かって周辺の人々から、このような聞きたくもない怒声や悲鳴やらが聞こえる。
壊れているのは僕の冷めきった心か。
それとも僕の周りにまとわりつく熱い正義感ぶった他人の言葉か。
僕は、その喧しい人々の声に耳を貸さずに、野次馬が比較的空いている道路際へと足を向ける。
もう、何もかも堅苦しいルールやモラルとかを捨てて自由になりたかった……。
『プップー!!』
そんな投げやりな人相で道路をろくに把握もせずに、心身ともに疲労でふらついていた僕は、猛烈な車のクラクションを肌でも感じながらも、体はそれにぶつかり、彼女の頭を抱いたまま勢いよく宙へと舞い上げられた。
この衝撃は乗用車に跳ねられた感覚か。
毎度、交通事故があっても無傷だった僕にもいよいよ天罰が下ったか。
まあいいか。
僕は彼女を救えなかった。
ならばここで死んでも後悔はない。
あの世で岬代に謝ろう。
……しかし、世の中とはそう簡単に思い通りにはいかないらしい。
「──ちょっとお客さん、もしもし?」
次に目を覚ました場所で、小綺麗な白装束の着物を着た女の子に声をかけられるまでは……。
****
……というわけで僕は死んだみたいだが、なぜこのような殺風景な灰色の大地に立っているんだ?
「そうか。僕は全知全能の神になったと言うわけか!」
僕は偶然、地面に置いてあった細長い棒切れを握り、チャンバラごっこのようにそれを振り回し、手の空いた左手でピストルを指で表現し、ニヒルな笑顔で爽やかに決めてみせる。
「……あなた、その神の目の前で何を寝ぼけたことをほざいてるのよ?」
僕のイカしたポーズを察した(?)のか、こめかみに指先を当て、苦々しい顔つきで眺めていた女子、いや美少女が思いっきり突っ込んできた。
そのツッコミの速度ときたら、秒速30メートルと言ったところか。
「……だとしたらあの女は大いなる台風さえも操る暗雲の魔女だな」
僕はうんうんと一人で分かったかのような顔で納得しながら、棒切れを構え、チャンバラの続きを始める。
その場に足を踏みしめて体を捻り、二段回転斬り。
何か、やたらと体が軽い。
重力を無視した無重力空間でもないようだが……。
「ひょっとして僕は死して強力なちからを得たかも知れないな」
「……そんな訳あるか。さっきから一人で暴走してないで、ちょっとは真剣に私の話を聞いてよ」
僕の動きを阻害するストレートロングヘアーな金髪碧眼の美少女。
幼女のような顔つきで、男のロマンに訴えかける胸は無く、背丈に至っては150もないだろう。
まさに生まれながらして、天性的なロリを極めたキング・オブ・ザ・ロリに間違いない。
「おい、さっきから僕のいかした決め技を邪魔するお前は誰だ?」
「誰だとは何よ。私にはサクラというちゃんとした名前があるんだから」
「そうか? サクラなんて名前、僕が知っている競走馬ではろくなやつがいなかったけどな」
そう、この手のタイプの馬は名前が勇ましいだけで、対して優勝に食い止める実力もない。
要するに実力も運も無き、名前負けだ。
同じサクラでも
ちなみに僕は20にも満たない未成年だから競馬の賭け事は出来ない。
「……失礼極まりないわね。天界を司る神の私に向かって馬とは何よ」
「何だよ。神か紙か、何か知らないけど、有終の美を飾る馬みたいに表彰台デビューしたいだろ」
「ふん、
「だな。さすがに歯はあまり強くなくて、生の人参は煎餅のようにボリボリ食べれないけどな、って……何で僕の名前を知ってるんだよ?」
「うふふ、この世界ではすべて筒抜けなのよ」
サクラが持っていた樫の杖を天へと掲げると、何もなかった灰色の空間からカラフルなお花畑へと瞬時に景色が変化する。
「そうか、馬にも衣装ってやつか」
「……そのことわざの使い道、思いっきり間違えているからね」
「何の。ことわざを転がして使い倒すことにより、男は真の栄光を手にすることができるのだ」
「──はいはい、もうたいそれたうんちく話は分かったから。そろそろこの世界の説明に入ってもいいかな?」
サクラが杖を目の前に振りかざし、僕の言葉の行く先を封じて、この世界についての話をし出す。
その難しい内容の中で僕は1つだけ感じたことがある。
彼女は天界の神様であり、やっぱり僕は死んでしまったということに……。
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