第28話 AIと電子書籍

AIと電子書籍



 もう、米国ではかなり問題になり始めているのが、AIによる短編小説、詩、児童書だ


 AIで書いた電子書籍がアマ〇ンで売られているのだが、AI生成とは書いていないのがかなりある。(加えて言えば作者名もでたらめ、出版社も架空だったりする)

当然のことながら、内容はかなり間違いだらけ。(嘘を真のごとくなので、児童書では、タチが悪い。親が中身を読んでいない場合、どこが嘘なのかを子供はまったく見抜けないからで、教育上、大問題だとする意見も多数出来てきた)


 いくつかの米国の新聞でもアマゾ〇の電子書籍が危ないとして、報じるものが出てきている。


 ChatGPTで文章を生成し、自動で電子書籍にして、それを売り出すところまでの手順を、(有料で)教えますよとかいう怪しいサイトも登場する始末である。

更にイラストも、AI生成である。これも今、米国で大問題になっているのだが。

情報商材屋はそんな事知ったこっちゃない。稼げるうちに荒稼ぎだぜという、まるで『転売屋』の様相を呈しているのだ。


 アマ〇ンでは内容には関知していないので、取り締まることもしていない。

どの道取り締まりなんてやらないだろう。その結果として、(英文の)電子書籍が荒れ始めている。

今は、よほど名前の知られた作者の手による書籍以外は、信用できないというほど(英文の)電子書籍が危ない。

手軽に出せるのが仇となり、ChatBot使いのツールキッズたちがOpenAIの出す文章を情報商材化してしまったのだ。

まあ、こんなことは考えるまでもなかったことだ。そもそも短編とはいえ、小説を生成させてしまう事が問題だったのだろう。

今の所、中編以上の長い小説を生成できないだけ、まだましなのだろう。


 米国の有名な投稿型SF小説マガジンの商業サイトに、ChatBot製のくだらん短編SF(もどき)がどっかと送り付けられて、編集者が読むのが追い付かず、悲鳴をあげて募集停止となった。

実に4割(2月の半ばで350本ほど)がChatGPT製だったという。しかも内容も読むに堪えないひどいものばかり。


 これの不味い点は、これによって新人作者の発表の場だったものが、AI製の未完成な、あるいは矛盾だらけのプロの作品水準以下の物によって飽和させられて、発表する場所を失ったことにある。

これを受けて、AIで生成したもの一切が投稿、持ち込み禁止とうたっているサイトも続々登場し始めた。

しかし、AIで生成している情報商材キッズたちは、変名と捨てアドレスを多数持ち、AI小説とそのAI挿絵を投げ込み続けているのだ。


 電子書籍の場は荒らされてしまい、これから文章で食べて行こうとする、英語圏の作者たちは頭を抱えている。(SNS上でAI恨み節が渦巻いているほどだ)

何しろ、持ち込んだ作品がAI製ではないことを証明するのは難しく、中編、または長編でなければ、信用できない。

(手書きの原稿ですら、AIで生成した後に、手書きで清書したものかもしれない。と疑われるとキリがない)

そして持ち込んだ作品が、10万単語あるいはそれ以上あるような中編小説だと、これをサクサク読んで評価を下すのは、たとえプロの編集でも容易ではない。

書く方も、短編は得意としても長いのは難しいと思う作者もいるだろう。

そもそも短編小説はアイデアや短くまとめ上げる構成力を端的に編集者と読者に見せることのできる場だった。

それが完全に踏みにじられてしまった。


 ちなみに、AIの学習データには、過去の小説作品も電子化されていてデータとして入手可能なものは全て、投入されている。

そのために誰それ風の文体で、こういうシーンを書いて。とお願いすると、その作家風の文章が出てくる。

これは、米国において、現実のプロの小説家たちにとって、大変悩ましい問題を持ちかけている。

これを自分の作品に取り込むと剽窃となるのか?という大きな問題と、自分が考えた訳じゃない上手い文章をそのまま組み込むことに自分のプロとしての誇りが傷つくのではないかということである。


剽窃なのかどうかはAIは教えてくれない。というより、これは独自のモノですと自信たっぷりに言われても嘘かもしれないのだ。

自分で全部調べて、そのうえで、これはAIが捻りだしたものだ、というのなら、剽窃ではないのだろうが、それを確認するのは大変な苦労を必要とする。

そんなことをするくらいなら、その文章を使わないか、AIが考えたんだからと、深く考えずに入れてしまえ、のどちらかになる。



 これは小説だけではなく写真やイラストにも言える。

学習データと称して、多数の絵画と写真とイラストが、有名無名、商業アマチュア関係なく、読み込まれているのだ。(実に十億五千万点以上だ)

その結果として、いまやAI絵画、AIイラストとAI合成写真は飛躍的な質の向上を果たしてしまった。

その裏で、一次創作者、あるいは写真家への還元は全くなされていない。


いわば、コストがゼロで評価の目が厳しくない素人に多数売れる安価な商材としてしまったのである。




米国のAI小説の流れが、日本の小説サイトにすぐに来るのかは定かではない。

たぶん、短編では同じように浸食されるのかもしれない。


問題は、もう一つある。


 それは生成系AIが、今後どの程度、制約を受けるかという点である。

画像生成系AIは欧米ではもはや、裁判沙汰だ。

(日本では、AI推進派と反対派がしのぎを削っているが、すでに元漫画家のA議員がAI推進派で、データを取り込むことは合法というのが著作権の変更で出ているのを御旗にして、日本のチャンス到来などとのたまう始末である)

写真生成AIによるディープフェイクポルノは子供の顔を携帯の写真で撮ってSNSにアップした瞬間に、リスクが生じる恐ろしい世界である。

服をはぎ取った、あざとい合成写真を平気で生成できるようになったからだ。

実際、米国ではかなりの件数、それが発生しているほか、顔だけ差し替えたり、服をAIで剝ぎ取った、リベンジポルノも発生して、徐々に社会問題は大きくなっている。

EUではAIを規制する条約まで出来るようで、今はその詳細を詰めている段階だ。



まあ、そんなわけで、小説の挿絵に生成系AIで作ったイラストを載せている人は要注意である。

いつ、それが「違法」となるか分からないのだ。


 日本では今の所、違法ではない。日本では合法だ!といきり立って言っても、米国で違法となった場合は、海外のそれを使っている作品は、海外に露出できない。(故にサイト運営者は難しい立場に立たされる)



 また学習データが違法となった場合、その時点から過去の生成結果も全て違法と解釈される可能性は、米国の場合、かなりある。

つまり今のAIツールは一見便利に見えても、将来的に大きなリスクを抱えている。


 それらのリスクが取り払われてからで、十分であろう。つまり、学習データがクリーンな物か、日本製で学習データも一から入れ直したクリーンなAIじゃないと、あぶなっかしくて使えないのだ。


ご用心。ご用心。

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