第24話 噓を真のごとくいう
それは、とあるところで見つけた、英文のセリフだった。
それが今回の始まり。
普通なら自分で、自力で読み解いたのと手元の電子辞書を使って自分が翻訳したのとどう違うのか、比べてみるくらい。(答え合わせ?)
もっと簡単に済ませたい場合はグーグル翻訳かBing翻訳に通して終わりなのだ。
だがふと思い立って、これをChatGPTで、OpenAIに翻訳してもらうことを思い立った。
“Luke, you’re going to find that many of the truths we cling to depend greatly on our own point of view.”
- Obi-wan.
私の超意訳:ルーク。我らが見つけるいくつかの真実とは我らの見ている視点に大きく依存し、それに固執している。
(やや意味不明か? 固執している、の部分をとった方がよさそう)
「ルーク、私たちがしがみつく真実の多くは、私たち自身の視点に大きく依存していることに気付くでしょう。」
――オビワン。
Bing
「ルーク、私たちがしがみついている真実の多くは、私たち自身の視点に大きく依存していることに気付くでしょう。」
――オビワン。
ほぼ同じです。しがみつくと翻訳したグーグルに対してBingはしがみついているとしただけです。
しかし、OpenAIは違っていました。
"ルーク、多くの真実は、我々が信じるものであるが、それらは私たちの観点に大きく依存することを見つけるでしょう。"
こちらの方が、機械翻訳としてみると、いくらか自然です。自然言語に特化したAIらしく、翻訳としてはこっちの方が優れています。
「私たち自身の視点」を「私たちの観点」とした部分が大きく違い、
「依存することを見つけるでしょう」 となっている部分も違っています
”we cling to depend greatly on our own point of view.”
は、これ短文ではグーグル翻訳では
「私たちは自分の視点に大きく依存することに執着しています」
となるので、ここを前の文章と絡めてどう翻訳するかで、全体が変わります。
たぶん、このセリフは日本語に翻訳するならば、
「ルーク。多くの真実とは、我らが信ずるものであろうが、それは我ら自身の物の見方に大きく依存しているのだ」
――オビワン
オビワンのお言葉として考えるなら、これくらいが日本語として、映画のセリフなり、小説のなかでのセリフとして適当だろうと思いつつ。
OpenAIはスターウォーズのことを知っているのか、いくつか質問したあと、本題であるこのセリフの翻訳の後、これを誰が言ったのか尋ねてみたのです。
このセリフ翻訳の時に、オビワンの部分は、実は入れていません。
AIには伏せてありました。
たぶん、相当なマニアじゃないと、このセリフを言った人物を当てられないと思っていました。だからAIは知っているかな?くらいで。
そして衝撃のお答えが。
私:
これがスターウォーズの誰かのセリフであるかを知っていますか?
OpenAI:
これは、スターウォーズの中の主人公であるルーク・スカイウォーカーが、彼の父であるダース・ベイダーに言われるセリフです。
ここで私は動揺。なにか、私の知らない物語があって、いつの間にか設定が大きく違ったのだろうか? あるいはダースベーダーも同じセリフをしゃべったのだろうか?
そこで質問を続けてみる。
私:
オビワンはルーク・スカイウォーカーの父であるダース・ベイダーと同一人物ですか?
OpenAI:
はい、オビワンはスターウォーズの中では、ルーク・スカイウォーカーの父であるダース・ベイダーと同一人物です。
内心、かなりおぃおぃとは思いました。それで、質問を続けました。
私:
弟子のアナキンと混同していませんか?
OpenAI:
いえ、アナキンはルーク・スカイウォーカーの弟子であり、ダース・ベイダーは、彼の父親です。
この珍問答のあと、OpenAIは自分が間違っていたようですと認めるんですが、こういう風にしてAIはしれっと嘘を真のごとく答えに混ぜてきますので、くれぐれも注意してください。
これはスターウォーズの中でも、とくに有名なジェダイの話とアナキンがダースベーダーになったこと事、アナキンがルークの父親だったということを、私が知っているから、このさきでAIが間違っていましたと認めたんです。
オビワンがジェダイ騎士であり、アナキンとルークのフォースの師匠であることをAIは知らなかったのです。
もし、これが私が知らない映画の話だったら、AIに丸め込まれたでしょう。
オビワンがダースベーダーだという、この嘘知識に丸め込まれたら、とんだ赤っ恥ですよ。はい。
つまり、スターウォーズほど有名な映画であっても、AIは実は登場人物の関係を正しく理解していないことに気が付かされました。(名前は知っているんですよ)
OpenAIは、社会的な議論とか、ちょっとした討論とかは得意なのだけど、こういう趣味分野は弱いんだな。と思い知らされました。
ちなみに、AIが事実として知っていて、それが例えば科学誌に掲載された論文として学会に広く認められているようなものとなると、OpenAIは絶対に自分が間違ってはいないと言い張ります。それが多少古く、現在では疑問符が付くようなものであっても、AIが学習したその時点では絶対的な事実であるためですが、AIは新事実を認めようとはしない傾向があります。
OpenAIは面白いですが、これ頼りに会社のレポートを書く人たちが米国でだいぶ増えてきたらしく、新人にやらせるべき文書仕事はもうない。とか言い出す人まで、出てきたのです。
このことをOpenAIに尋ねると、AIは、AIが生成するレポートについて「人間が持つ感性や判断力が含まれていないため、文書に対するクリティカルシンキングや、文書をよりわかりやすくするための工夫などが必要です。そのため、文書作成の仕事が完全に消えてしまうということは考えにくいです」
と答えています。
OpenAIはさらに、新人を教育できるように会社は適切なマネージメントが必要です。とまでいいだす。
極めて、保守的というか、温厚なエリート層が言いそうなお言葉を多数いただきましたが。
AIに任せればそれは出来るから、そういう単純な文章作業はAIに任せて人間はもっと別のことをしましょうとは、絶対に言わないんですよ。AIを教育した人たちと使う人々の間に、大きな齟齬が出てきているような気がします。
まさにこれはAIで生成する絵と同じで、使う人次第です。
もう簡単な絵ならAIの生成した「何か」で十分だ。人に頼まなくていいとかいうものがWebに氾濫するのは時間の問題。それが会社の中で作成されるビジネス文書にまで広がろうとしている。
(プログラムコードをOpenAIに書かせる学生が増えて来て、米国の一部の大学では問題にすらなったという)
嘘も真のごとく答えてしまうAIなんだということを、ちゃんと認識して使わないと、大変です。
そのうちに大きな社会問題になるだろうと、私は考えています。
追記:2023/01/06
1/5のニューヨークタイムのニュースでしょうか。
米国のニューヨーク市では、教育部門関係のPCと子供たちのタブレットからChatGPT(その他人工知能を利用したもの)にネットワーク接続する事を禁止する通達が出され、学校と教育機関のデバイス、ネットワークからはChatGPTへアクセスするとブロックされるようになったというニュース。
早くも、色んな反応が出ているようです。
そもそもChatGPTの利用規約に年齢制限があって、たしか18歳以上だったか、ある筈なので、小学校で子供が接続とか規約違反なのでしょうけど、たぶんそんなの誰も守らないよね。
で、先生が使うならいいのではないかという意見や、もう子供が家に帰って宿題を自分でする時代は終わったとかいう人まで出る。
しかし、人工知能に質問してうまく答えを引き出す能力は、確かにそこで磨かれるかもしれないが、「自分で考えて答えを求めようとする」というのが勉強の1つな訳です。人工知能に質問して、それっぽい答えが出た!わーい。宿題終わり。 ではまずかろうと、私だって思います。これって、無料の家庭教師が、質問に全部答えて宿題を肩代わりしてあげたのと、何にも変わらないからで、これでは、考える力はほとんど身につかないでしょう。
(しかも、いかにもそれっぽく、理屈っぽく結論に至っているのに、その答えが、根本的に間違っているかもしれないのです。AIは正解を保証していません)
あるいは、クラスの人とディスカッションして、問題の答えに近づこうとする。
というのも米国では小学校からやっている教育ですが、AIがあっという間に答えを出してしまったら、これが破壊されかねないとして、大きな論争になりそうです。
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