第10話 当てにならない記憶

 昔、結構ノッて設定を作ったスペオペというか、スペオペ風味のドタバタした話で、いかにもその時のラノベっぽいやつ。


 それをやっていたのは90年代の半ばである。

その時に1話毎に完結、4話の連作でお終いというのを細かい設定と大雑把なプロットまで作った。もちろん、その4話以降の話も作れるのだが、長々続けても自分のネタが続かなかろうと、4話できりよく終わりという構成。

第1話はストーリーボードまで書いた。(朧気な記憶だ。)


 かなり作り込んだのは確かだったが、その設定を書いたスケッチブックや紙がない。

昨日、物置をかなり探索した。田舎の物置なのでそれなり広い。正しく測ったことはないがたぶん12畳くらい。もう少し広いかも。

とにかく兄貴の遺品的な物やら私の引っ越しで開けなかった箱がうず高く積まれていて、下の方は探すのも大変なのだ。重さで一部の箱は潰れているし。それで自分の箱をかなり探したが、出てこない。


 もしその時にPCに入れていたとしても、バックアップが私の場合はMOだから、もう読み出す方法がない。一応、その時代のMOは全て保存しては有るが・・・もう25年位経つので、磁気が保持されているかは不明だ。こういう、磁気に頼る記憶というのは、半永久ではない。読み出し方法も含めてだが。それはUSBメモリとか、SSDにバックアップして保存とかでも同じだ。この手のシリコンでできた不揮発メモリというのは、電位によって記憶しているから、時間が立つと徐々に電位降下して、空っぽになると情報が失われる。それを避けるには、時々内容を読み出した後に、その内容を上書きすることだ。こうすると再び電位が保たれる。しかし、こういう不揮発メモリは、書き込み回数に制限がある。つまり、どの道長期間の保存には使えないのである。


 HDDだと多少は長く持つが、今の高密度な大容量だと、保持できる時間は昔の低容量なHDDよりは短くなる。単位あたりの面積が小さいからそこにある磁気の量も少なくなるので、完全に情報が失われるまでの時間も短くなる。そこで定期的に通電して読み出して、そっくり書き直す事が必要になる。

CD-R/RWだって同じだ。情報を記録したポリカーボネート樹脂の後ろにある反射被膜は蒸着だが、これが2枚張り合わせたポリカーボネートが剥がれて中の蒸着された反射被膜が劣化あるいは剥がれると忽ち読み出せなくなる。あるいはCD-R/RWの中心に近い円周に有る溝が少しでも傷つくと、そこはCD-R/RWに記録した情報の目録であって、読み出せなくなる。



 ああ、何の話だ。

人間の記憶もそうだけど、磁気の記憶だって当てにならないよね。という話だ。一番当てになるのは、結局、紙。紙に物理的に記録する。インクジェットは、インクがどれだけ耐候性があるかにも左右される。

レーザープリントが一番、寿命が長い気がする。レーザーの場合は、カーボンを紙に定着させているので、インクよりは確実だ。次は油性ボールペンとかマジックペンだろうか。次が水性ボールペンで次が鉛筆。水性ペンはそのインクにも左右されるが、20年も経てば、紫外線で褪めてしまって読めないものもある。紙の袋に入れて、暗い場所に保存が一番だな。


……


その時は、鉛筆で汎ゆる設定を書き、エンジンの絵とかはスケッチブックに描いてあった(はずだ)。

主人公の乗るスペースシップやライバルの乗ってる船とか、船内の様子とか、そういうのを文字で書くと分かりにくいものを絵にしてあった。

そのラフスケッチを見ながらなら、文字で起こすのは楽だろうという考えだ。


しかし、紙を失ってしまっては、MO保存とレベルは変わらないな。

もう手元でそれを確かめられない。MOなら読み出す方法がないという、失ったという意味でまったく変わらない。



 とりあえずこれはお風呂に入っていて唐突に思い出した、昔作りかけた物語。それで翌日に物置を探った。東京から持って帰った荷物の中で、開けてない箱は全て物置だった。


 そんなこんなで、やっと見つけたのは、なにかのボードに赤茶けたセロテープで、かろうじて張り付いていた紙が1枚。この1枚のメモ以外は全て失われていて、思い出すしかない。このメモも物凄い変色している。真っ白だったはずだが、一部は茶色で他はクリーム色(?)になり、鉛筆の文字が読み取りにくい。


その1枚のメモを苦労して読んで、思い出せたことを紙に書き出していく。

すると、第1話のかなりざっくりした設定と登場人物、かなりざっくりしたプロットらしきものは思い出した。

第1話で主要人物はすべて出さないといけないから、その為のプロット的なものが、簡単な文でメモされていた。それを写し取ったわけだ。

ひどいミミズ文字な上に、消えかけているので、判読はかなり困難だったのは自業自得である。


 しかし、致命的な部分が抜け落ちていた。SF考証部分というか、世界の設定が全く思い出せない。

エンジン型式とか、その時代の宇宙船の航宙方法や、惑星間を移動するのにかかる時間等、きちんと作ったはずなのだが。たしか1年近くゆっくりと時間を掛けて作ったはずだった。

登場する星の設定とか宇宙港やらその近くの施設、都市、軌道ステーションとか、出てくるモブ(あまり重要じゃない人)やら、パトロンとか、陰謀とそれに絡む企業とか、ちゃんと作って行かないと細かい部分が文字で書けない。その場で適当に書いたら、とも思ったがそれは自分の主義というかポリシーである『設定はきちんと作るべし』に思いっきり反している。


 その物語の世界は、勿論はるかな未来なのだが、90年代の当時のSFな作品の受け止め方と現代の受け止め方は色々違うだろうなとは思う。



ちゃんと考証して作り直せないと、これは全くもってお蔵入りである。

もともとお蔵に入っていたものだし、そのまま黴を生やして終わりになるかは、設定をどこまで作り直せるか次第か。いや、なぜお蔵入りにしたのか?


まあ、今更書ける話なのか、そのへんも含めて、ぼちぼちと見直すしか無いです。

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