(13)



「出来た……っ!」


レオンへのお返事は少し時間が掛かってしまったけど書くことが出来た。内容を見返したり、読みにくい字はないか、誤字脱字はないかと再度確認し、大丈夫だという結論に至ったので、私は早速お父様にお願いをするため部屋を出た。

自然と早足になってしまうのは、初めて友達へ手紙を書いたからだろう。我ながら単純だと思うがこういう性格なのだから仕方がない、うん。


この時間、お父様は執務室にいる。他の貴族の方々とのやり取りをするため手紙をしたためたり、仕事の書類をまとめたりしているらしい。詳しくは教えてくれないので分からないけれど。

早足で来たため早く着いた私は、息を整えてからドアをノックした。


「はい」


くぐもった声がドアの向こう側から聞こえてくる。


「お父様、カーラです」

「入りなさい」


失礼します、とドアを開ける。子供用に出来ていないため少し重かったが、私はなんとか開けて体を滑り込ませた。


「どうした?」

「あの、お願いがあります」


いざ面と向かって言うとなると恥ずかしくなる。なんて言おうか考えながらもじもじとしていると、お父様は私の手にある便箋へ視線を向けた。


「それは?」

「これは、その、レオンへのお返事なのですけれど」

「レオン様への?」

「はい」

「いつの間に手紙を……あぁ、なるほど、あいつの知恵か」


お父様は眉根を寄せ、そして短く息を吐いた。やっぱりアレクおじさまの知恵だったんだなぁ、と思いつつ、持っていた便箋をお父様に渡した。


「お願いします……あぁ! ダメですお父様! 内容は読まないでください!」


別に読まれて困るものは書いていない。まずはお手紙を出してくれたことへのお礼、そして今日の出来事、今度王都へ行くことになったこと等、とりとめのない話ばかり。しかし、レオン以外の人に読まれるのは些か恥ずかしいのだ。

私が手を伸ばして手紙を取り返そうとしたため、お父様は読むことをやめてすぐに顔を上げた。まだ眉根を寄せているが、どうやら手紙を送ってくれるらしい。こほん、と咳払いを一つ、そして何かを呟いた後、便箋に軽く息を吹きかけた。


「わぁっ!」


便箋はみるみるうちに鳥へと姿を変える。レオンが送ってくれたのと同じように角張っており、厚みがない。鳥は顔を上げ、そして羽を広げた。私の頭上を旋回して窓に向かう。


「このぐらいの風なら問題なく城へ飛んでいくだろう」

「やっぱり自力でお城まで飛ぶんですね!」

「……当たり前だろう?」


お父様、あの、そんな目で見るのはやめてくださいません? 分かってます、分かってますけど、紙の鳥が王都まで飛んでいくなんて不思議なんですもの。魔法だからと言われてしまえばそれまでですが。


「お父様、私も魔法が使えるようになったらこれも出来ますか?」

「まぁ、出来なくはない」

「本当ですか!?」


もし私も出来るようになれば、お父様の手を煩わせることなく手紙のやりとりができる。レオンへ送る度にお父様にお願いするのは申し訳ないと思ったからだ。


「早く魔法が使えるようになりたいなぁ」


ぽつりと呟いた言葉と共に、魔法の鳥は窓から城へと飛び立っていった。

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