滅びゆく国で英雄《しょうもうひん》は何を思う
@sinn151
第1話
結局俺は
壁には噴き出した鮮血が飛び散り,あたりには全く同じ形をした剣つるぎが身体に刺さった無数の死体。賢者も、王も、王妃も、王太子も、王女も、近衛兵も、等しくすべてが死に絶えた謁見室で男は一人佇んでいる。
「これでよかったのか…?いや、俺にはこうすることしか出来なかった…。これでしかもう俺が俺であると証明できなかった…。だからきっと正しいさ…!」
男は視点が定まらないままふらふらと血濡れた玉座に近寄り,その前で跪いた。
「もう少しで全てが終わるんだ…。俺以外は俺が全部殺した…。あとはここで…俺が終われば完結だ…!」
嬉しそうに、悲しそうに、悔しそうに、男は自らの剣を上に放り投げる。その剣を見上げると自らの脳天を目指し落下してきていた。紅黒く染まった刀身にあたりの死体の顔が映って見えた。しかし男にはもうその顔から感情を読むだけの思考は残っていなかった。
男の磨き上げられた戦闘技能は衰えておらず,自らに向かって堕ちてくる剣はスローモーションで認識されていた。
(最後の最後まで俺は戦、いや殺ししか出来なかったか…。こんな時ですら、戦闘技能に翳りが見えねえ…。)
自嘲の笑みを浮かべてゆっくりと迫る剣を受け入れる。
(俺の出した結論はこれだった…。けど…あぁ…後悔しか見つからない…!いっそ俺に力がなかったら…。なんて、考えるだけ無駄かね…?)
切っ先が男の脳天にほんの少しだけ触れる。
(終わりのこの一瞬…。この一瞬くらいは…。この全てが空回りしてしまった俺の人生を振り返って…。)
その身にゆっくりと刀身がめり込み,どす黒い血が溢れ始める。
その瞬間、目を見開き叫んだ。
「俺は…誰よりも弱かった!!!!」
そして英雄しょうもうひんは斃れ、弱者へと成り下がる。
これは誰も救われず、誰も助からず、致命的なまでに食い違ってしまった弱者の
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