ソロ休み。

卯野ましろ

ソロ休み。

 一人っていうのも、それはそれで気楽で好き。だけど、


「出ましたぁ! ぼっちの負け惜しみ~」

「あなたそれって、一人が良いとかじゃなくて……ただの強がりじゃないの~?」

「本当は淋しいくせに、すごい意地っ張りだね」


 私みたいなのがそれを言ったら、そういう風に返されるんだろうね。別に良いけど。




 本日は休日。平日だけど。独身で彼氏もいない私。休日が友人と合うことも多くない。そんな私は、一人で休日を過ごすことが多い。まあ、それも良き。

 私が今いるのはバス停。二時間に一回しか来ないバスを待っている……お、来た来た。乗るか。乗車券、忘れずに。

 席はガラガラ。空いている席に座り、窓を見る。私は乗り物に揺られながら、外を見るのが好きだ。

 あ、そうだ。今のうちに……。




「ありがとうございました~」


 運賃を払い、バスを出た。やっぱり私は、早めに小銭を用意しておくべきだ。降りる直前だったら確実に焦る。貯まっていた十円玉を消化できて、すごく気持ちが良い。外も気持ちが良い。今日は雲一つない晴天。

 本日の予定は、雑貨屋へ行って、郵便局で切手を物色して、お昼は回転寿司で食べて……その後はバスが来るまで色々なお店をブラブラする。

 さ、行くか。

 バス停から徒歩五分の雑貨屋を目指した。天気が良いから、外を歩いているだけで楽しい。雑貨屋では収穫がなくても、オシャレなものに囲まれているだけで幸せな気分になれる。郵便局では、色々な切手と出会えるのが嬉しい。回転寿司は、お一人様が珍しくない。だから私は何も気にせず、おいしくマイペースに食事ができる。各席には、皿を仕舞える隙間が付いている。それでテーブルからすぐに皿を消せるので、食べた枚数を恥ずかしがることもない。二十皿(それプラスサイドメニュー)は食べる私にとって、ありがたいシステムだ。満腹になったら、バスに乗るまで町をブラブラ……。

 楽しい時間は、あっという間。

 今日も充実していた。バスの時間以外、私を縛り付けるものは何もないから気楽だ。どんなこともマイペースに自由に楽しめる。




 給料日が近い休みは、お金が厳しいのでバスなどは乗らない。天気が良いならば、自転車に乗る。でも買い物はしない。特に行く宛もなく、ただただ自転車を漕ぐだけ。それでも楽しい。時間はたくさんあるから、通ったことがない道を辿る。

 あそこに繋がっていたんだ、この道!

 わ、こんなところにケーキ屋さん。お給料が入ったら絶対に買いに行こう!

 新たな発見に喜び、非日常に触れて、気分をリフレッシュ。

 調子が良ければ、そこそこ遠くへ放浪。あ、でも迷子には注意。そして家に到着して「ああ……今日は自転車で、あんな遠くに行けたんだ!」と自分を褒めてあげたくなる。心も体も健康的。おかげで今夜は、ぐっすり眠れる。




 と、いうことで私は幸せです。一人でも案外、淋しくないです。平気です。




「いつも休みの日、何してんの?」


 出勤日。お弁当を食べていると、会社の先輩から質問された。


「一人で買い物したり、お金がなければサイクリングしています」


 私は正直者だ。


「え、淋しくないの?」

「はい。一人も気楽で、それはそれで好きですね」


 キッパリと言ったら、お次はあれで決まりだろう。さあ、どうぞ嫌味を「へー……でも、たまには二人っていうのも良くない?」


 ……ん?

 予想していたのと、流れが違うぞ?


「これ……映画のチケット、二枚あるんだけどさ」

「……!」


 マジか。


「お互い休みの日、行かない?」


 一人が好きな私。


「……私で良ければ」


 でも、二人も好きな私。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

ソロ休み。 卯野ましろ @unm46

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ