第23回 天使長と約束と

 そのいや予感よかんがしてならなかった。

 ゆめながくなりそうだった。

 リーフェの上司じょうしたらしい。

 ……予感よかんはしてたけど。

 まさか天使長てんしちょうだとはおもわなかった。

 神話好しんわずきがここにるか。

 多分たぶん過去改変かこかいへんしかられるかね。


 「こんばんわ。」


 「ましたね、名前なまえわなくても分かりますね?」


 「ミカエルさまですよね?」


 「結構けっこう要件ようけんかりますか?」


 「……リーン、ですか?」


 「素晴すばらしい。

 彼女かのじょははのサーリーンは魔族まぞくですが貴方あなた干渉かんしょう天界てんかいあつかことになりました。」


 「……それは、どういう意味いみですか?」


 「そう警戒けいかいしないでください。

 貴方あなたにとってもわるはなしではないはずです。

 わたしちからしめしてください。

 そうすれば天使長てんしちょうとして彼女かのじょたちの昇華しょうか保証ほしょうしましょう。」


 「リーンたちは、まだ霊体れいたいのまま彷徨さまよっているんですか……!」


 パッと背後はいごひかりたま多数たすうあらわれる。


 「ほう、精霊使役魔法せいれいしえきまほう

 ゆめ使つか達人たつじんでも単独たんどくでは一体いったい限度げんどなのに……、なんですかこのかずは。」


 「こたえてください!

 リーンとサーリーンはまだ呪縛じゅばくされたままなのですか!?」


 すべてのひかりひかりすじあてがわれる。


 「ちょ、ちょっと!

 いくら貴方あなたでも天使長てんしちょうかなわけ……!」


 「われあたえる!23のかぎ!」


 パキーン、とおとがしてきらびやかなひかりあふれる。


 「人間にんげんが23もの精霊せいれいあつかいますか……。」


 おちゃんでいた天使長てんしちょうがすっとがる。


 「ひらけ!23のとびら!」


 ひかりたまから一気いっき光線こうせん発射はっしゃされる。


 「……たれ42の精霊せいれい、エレメンタルレジスト。」


 パァン!とかるおとてて光線こうせんはじかれてしまう。


 「ぐぅっ……!」


 眩暈めまいがする。

 ここで天使長てんしちょう満足まんぞくさせれば、彼女かのじょたちは解放かいほうされる。

 最後さいご正念場しょうねんばだ。


 「1つ1つの精霊せいれい砲撃ほうげき威力いりょくもうぶんありません。

 ですが、23もの精霊せいれいあつえたとて所詮しょせん人間にんげん

 天使てんしかなうはずはありません。」


 「ちょ、ちょっとミカエルさま……、そんなことったら……。」


 ぼく背後はいごあらわれるひかりかべ


 「え?なんですか?この魔法まほうは。」


 「ま、まずい!ゆめえにする!?」


 「なんですか?」


 「ミカエルさま、あれは全部精霊ぜんぶせいれいです!」


 「なんですって!?」


 「うぐぐぐ……!リーン、サーリーンてろよ……!

 きみたちに出来でき最後さいごのお節介せっかいだ!

 われあたえる!23まんかぎ!」


 「に、23まん!?かみでさえ10まん限度げんど

 人間如にんげんごときが天使てんしはおろかかみえるなど不可能ふかのうです!

 はなまえ夢遮断ゆめしゃだんです!」


 バギィ。といやおとててひかり散開さんかいする。

 極彩色ごくさいしきひかり一気いっきにミカエルをにらむ。


 「う、うそです!

 はなてるはずがありません!

 23の精霊せいれい人間にんげん使役しえきした直後ちょくごで1000ばい魔力まりょくなど……!」


 「ミカエルさまめてください!かれならちます!

 いままでもブラムスとノーチェスをあつってきた経歴けいれきがあります!

 23まん精霊せいれいなんてはなたれたらここが崩壊ほうかいします!」


 地響じひびきがする。


 「ほ、本気ほんきですか……!?

 人間にんげんですよ!?

 23でさえありないのに、23まんですよ!?」


 「ま、魔力まりょくが……、りない!」 


 リーンとサーリーンのこえこえる。


 「お父様とうさま!」


 「わたししあわせにしてくれてありがとう、むすめをよろしくね。」


 そうだ、ここでやらなきゃいつやるんだ。

 23だろうが23まんだろうがわらない。

 

 「……これだけってもゆめ遮断しゃだんしない!

 すべての精霊せいれいこえけているということですか!?」


 「ひらけ!23まんの……!」


 「ま、ってください!」


 極彩色ごくさいしきひかりはそのにとどまっている。


 「……挑発ちょうはつぎましたね、もうわけありません。

 今日きょう、すぐにでもリーンとサーリーンを昇華しょうかさせます。

 どうか、わたしゆるしてはいただけませんか。」


 けるようにえるひかりかべ


 「あ、えた……。」


 「なんということでしょう。

 せるということすべての精霊せいれい確実かくじつ支配下しはいかにあったということです。

 砲撃ほうげきはなてたという確証かくしょうでもあります。

 かみなら無事ぶじでしょうが、わたしではんでいたでしょうね。」


 バターン、とたおれる自分じぶん


 「ま、まだ……!

 意識いしきぶのはもうすこって……!」


 「おやすみください。

 天使てんし約束やくそくやぶりません。

 それは口約束くちやくそくでも契約締結けいやくていけつひとしく、かろんじません。

 23まん精霊せいれいかぎあたえただけでも偉業いぎょう人智じんちえています。

 ……かみ報告ほうこくしなければならないでしょうね。」


 「あ、やっぱりそうです?」


 「リーフェ、貴女あなたはいいひといているようですね?」


 「まぁ、なんだかんだで27ねんいですからね。」


 「はぁっ、はぁっ、リーン、サーリーン……っ。」


 「ちょっと、夢遮断ゆめしゃだんしなさいよ。

 ゆめ原因げんいん精神壊せいしんこわすなんてやめてよね。」


 「無理むりをしている原因げんいんわたしのようですね。

 すぐにでも、といました。

 リーン、サーリーン、てください。」


 「……え?」


 ひかりとびらから女性じょせい二人ふたりあらわれる。


 「お父様とうさま無茶むちゃして……!」


 ながつめつの一対いっついなみだぐんでいるおんな

 リーンだ。


 「べつ彷徨さまよわされてもうらまなかったのに。」


 リーンによくている片翼かたよく女性じょせい、サーリーンだ。


 「あ、あぁあぁ……!

 リーンにサーリーン。

 またえた……!

 ごめん、ぼくは……!

 きみたちをしあわせにしたかったんだ……!

 ごめん…!ごめんよ…!」


 「いいんです、もうしあわせですから。」


 「そうそう。

 ミカエルさま本当ほんとうためすだけでここまでするかったとおもうよ?」


 「それでもいいんだ……。

 きみたちがてんかえとき見送みおくるまでは……!」


 「では、今生こんじょうわかれになります。

 リーン、サーリーン、ことはありませんか?」


 「あらためてお父様とうさまわたしんでくださってありがとうございました。」


 「わたし一緒いっしょわたしむすめしあわせにしてくれてありがとね!」


 「出会であってくれて、ありがとう……!」


 ひかりたまになってキューンとてんんでいく二人ふたり


 「よ、よくった……ほうだな。」


 「おやすみ。」


 「では、わたしはこれにて。

 興味深きょうみぶかかたがいらっしゃいますので、またます。」


 「あら、ミカエルさま興味何きょうみなんめずらしい。」


 「……っ!……っ!」


 こえとおくなっていく。

 ゆめ途切とぎれる。


 ふとめた。

 いていた。

 ほんのわずかだったけど、たしかに時間じかんをくれた彼女かのじょたち。

 その最後さいご瞬間しゅんかんえてよかった。

 リーン、サーリーン。

 ぼく頑張がんばったよね?

 23まん精霊せいれいあつかってミカエルさまみとめられたよ。

 きみたちはしあわせかい?

 もう何十年なんじゅうねんかしたらそっちにくから。

 それまでっててよ。

 いや、ってなくてもいい。

 散々待さんざんまたせたもんね。

 えらそうなことはわない。

 ありがとう。

 ただ、それだけ。

 所詮しょせんゆめかもれない。

 でも、ぼくにとってゆめとは特別とくべつなものだから。

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