第7会 主を選ぶ二つの剣

 お、今日きょうゆめれたな。

 

 ……つち道路どうろ見慣みなれない長屋ながやならんでいる。

 

 江戸時代えどじだいかここは。

 

 ひとすくないようだが、ないわけではなさそうだ。

 

 「リーフェ、てるんでしょ。」

 

 「ばれた?」

 

 ひょっこり背中せなかからてくるリーフェ。

 

 「ここ、どこ?」

 

 「多分たぶん時代劇じだいげきゆめじゃないかな。

 これもあまり記憶きおくにない。」

 

 すると、どこからかこえひびく。

 

 「あやかしだーっ!」

 

 「あやかし?」

 

 「妖怪ようかいたぐいね。

 貴方あなたゆめ今日きょう悪夢あくむようよ。」

 

 「うええ。」

 

 「あやかしということはてきているということね。」

 

 「ぼくゆめっててきらしいてきないんじゃなかったっけ?」

 

 「悪夢あくむ場合ばあいいやおも出等でとう概念がいねんとしててきになって登場とうじょうすることがあるの。

 明晰夢めいせきむつくられたわたしたちの空間くうかんとはちがう。

 今回こんかいがそれね。

 魔法まほう準備じゅんびしておくのよ?」

 

 「うっそん。」

 

 ふと、あたりがくらくなる。

 

 太陽たいようでもくもかくれたか。

 

 ると背丈せたけ自分じぶん何倍なんばいもありそうなおにが。

 

 「ちょっ、なにこれ!?」

 

 「貴方あなた相当そうとうストレスでもめてるんじゃないの?

 こんなに悪夢的概念あくむてきがいねんつよてきって相当そうとうよ?」

 

 「自覚じかくがない……。」

 

 「はあああっ!」

 

 リーフェが風魔法かぜまほう詠唱準備えいしょうじゅんびにかかる。

 

 周囲しゅうい人間にんげん一方向いちほうこうげていく。

 

 おかのある方面ほうめんのようだ。

 

 「かぜよ! まえてききなさい!」

 

 鎌鼬かまいたちかぜやいばおにかう。

 

 真正面ましょうめん直撃ちょくげき

 

 しかし。

 

 おになん変化へんかもない。

 

 「あいっちゃー……、これはわたしえないかも。」

 

 おにこぶしげる。

 

 「あ……。」

 

 「リーフェ、あぶないっ!」

 

 おおきな魔法まほう詠唱えいしょうした反動はんどううごけなかったリーフェをきかかえておに一撃いちげき間一髪かんいっぱつ回避かいひする。

 

 無我夢中むがむちゅうだったせいか回避かいひしたさいそらんだのかちゅういている。

 

 明日あした最悪さいあくだろうな……。

 

 「ご、ごめんなさい。」

 

 「大丈夫だいじょうぶ

 こいつをなんとかするにはどうしたらいい?」

 

 「ここはあくまで貴方あなたゆめ

 わたし部屋へやではないから支配力しはいりょく貴方あなたほううえ

 貴方あなたなんとかするしかないでしょうね。」

 

 「でも、僕魔法ぼくまほう全然ぜんぜんだし……、ましてたたかなんて……。」

 

 「貴方あなたべる。

 案外貴方あんがいあなたって魔法まほうたよらないたたかかたほういているかもしれないわね。」

 

 「それって、どういう……。」

 

 っているあいだに、おにこぶし追撃ついげき

 

 「あぁ、もうしつこい!」

 

 後方こうほうんで回避かいひする。

 

 「リーフェ、あまりたない!

 魔法まほうたよらないたたかかたって!?」

 

 「ま、これでも剣聖けんせいくらいさずかかった過去かこもあるわけだし、記憶きおくしてあげる。

 べつかえさなくてもいいけど。

 それでなんとかしなさいな。」

 

 「リーフェが剣聖けんせい!?」

 

 「武器ぶき貴方あなた明晰夢めいせきむすのよ?

 属性ぞくせいわたしではこんな状況じょうきょうじゃ呑気のいんき判断はんだんもできやしない。」

 

 「あぁ、もう!

 やってみる!」

 

 とおくに着陸ちゃくりくするとリーフェをすこはなす。

 

 「えーと、あ。

 過去かこにこんな夢見ゆめみたな。

 短刀たんとう長剣ちょうけんあつかってたたかゆめ。」

 

 「リーフェ、記憶きおくを!」

 

 「はい、どうぞー。」

 

 たたかかた記憶きおく明晰夢的めいせきむてきながんでくる。

 

 まるで英雄えいゆうさながらのようだ。

 

 するとおにはトゲトゲのついた金棒かなぼうす。

 

 「うっそん!

 素手すでじゃないの!?

 じゃ、こっちもしますか!」

 

 すると左手ひだりて短刀たんとう右手みぎて長剣ちょうけん召喚しょうかんされる。

 

 「あのつるぎ……、まさか。」

 

 ろされる金棒かなぼう

 

 おおきい金切かなきおんひびく。

 

 意外いがいにもぼくつるぎをクロスさせて金棒かなぼうめられた。

 

 「け、けん耐久性たいきゅうせいがあってよかった。

 身体からだ意外いがいえれてる。

 くぞ、ここから逆転ぎゃくてんだ!」

 

 明晰夢めいせきむ能力のうりょく如何いかんなく発揮はっきし、金棒かなぼうしのける。

 

 「おもしたぞ、このつるぎ

 短刀たんとうブラムスと長剣ちょうけんノーチェスだ!」

 

 「やっぱり!

 なんでそんな武器ぶき……、ない!」

 

 「なんでかはらない!

 いまはこいつをなんとかする!」

 

 空中浮遊くうちゅうふゆう

 

 おに頭上ずじょうたとおもったら金棒かなぼうがまたる。

 

 「ブラムス、かえせ!」

 

 甲高かんだかおとててかえされる金棒かなぼう

 

 それにらず金棒かなぼうくだけてる。

 

 「ノーチェス、け!

 いっけええええっ!」

 

 頭上ずじょうより地面じめんまで一直線いっちょくせん

 

 するとおにあわのようにはじけてえた。

 

 「つ、つよい……!」

 

 「……ふぅ。」

 

 様子ようすうかがっていたリーフェが安全確認あんぜんかくにんえるとちかづいてくる。

 

 「ねえ、おしえて。

 その武器ぶきゆめなかではある意味伝説いみでんせつにすらならない超越剣ちょうえつけんよ。

 だって召喚出来しょうかんできはずがないんですもの。

 なぜならその二刀にとうゆめなか童話どうわつるぎ

 貴方あなた明晰夢めいせきむって、こんなことまで出来できちゃうの?」

 

 「ゆめなか童話どうわ

 まぁそれはおいおいくとして……、記憶きおくしてくれてありがとう。

 おかげ悪夢あくむれた。」

 

 「ま、まぁそれはいいけど……。」

 

 「げた人達ひとたち心配しんぱいだ。

 ってみよう。」

 

 「そうね。」

 

 おかのあるほう反対方面はんたいほうめんかうと無造作むぞうさつぶされたはなが。

 

 「……。」

 

 「ゼンテイカ……、一般的いっぱんてきうニッコウキスゲね。

 高山こうざん一定時期いっていじきしかかないとわれている……。

 こんな低地ていちいていたのは貴方あなたおもいがつよかったからだろうけど……、この状況じょうきょうひどいわね。」

 

 おくではげた人達ひとたち呑気のんき宴会えんかいをしている。

 

 「ぼくおになんとかしているあいだげたのはいいよ。

 この希少きしょうはなつぶして、宴会えんかいしてるって何事なにごと

 何様なにさまなんだ。」

 

 ゾワッとくろもやからだからるのがかる。

 

 「あ、やばい。

 貴方あなたそんなにおこるとゆめが……。」

 

 「いい加減かげんにしろ、バカー!」

 

 バチン!とおとがするとリーフェの部屋へやた。

 

 「あぁ、ビックリしたわ。」

 

 「はらわたえくりかえりそうなゆめだった。」

 

 「余程気よほどきらないゆめだったってことかしら。

 ゆめをやりなお明晰夢力めいせきむりょく使つかったのね。

 正確せいかくにはゆめ遮断しゃだん

 宴会えんかいをしていたひとたちは消滅しょうめつしたでしょうね。

 貴方あなたがまたゆめないかぎりには。」

 

 「らないやい。」

 

 「つかれたでしょう、おちゃにしない?」

 

 「……大人気おとなげなくてもうわけない。」

 

 「いいのよ、貴方あなたはそういうところを我慢がまんするふしがあるからゆめくらい勝手かってしなさいな。」

 

 「ありがとう。」

 

 紅茶こうちゃとお茶菓子ちゃがし用意よういされるとテーブルをかこむ。

 

 いつものように他愛たあいもないはなしをしながらおちゃとお茶菓子ちゃがしいただいていると……、

 

 「……あら?」

 

 視線しせんとすリーフェのさきゆかかれた短刀たんとう長剣ちょうけん

 

 「ねぇ、それさわってもいい?」

 

 「いいよ?」

 

 めずらしくリーフェからあゆってきて、短刀たんとう長剣ちょうけん……、

 

 「おもっ! なにこれ!?」

 

 「え? そんなにおもい?」

 

 自分じぶんってみるがスイッとかるがる。

 

 「……どうやら、あるじえらぶようね。」

 

 「そうなの?」

 

 「ちょっと魔法まほう調査ちょうさしてみてもいい?」

 

 「どうぞどうぞ。」

 

 両刀りょうとうをかざすリーフェ。

 

 「んー……、それ自体じたいには重量じゅうりょうがあまりないのね。

 だけど、主以外あるじいがいひとたいしては重量じゅうりょうがる。

 威力的いりょくには両方りょうほうともエクスカリバー以上いじょう

 簡単かんたんにはたたれないでしょうけど、相当そうとう威力いりょくがあるみたいよ。」

 

 「これが!?」

 

 「明晰夢めいせきむ賜物たまものね。

 ゆめもここまでると伝説でんせつえてくるのね……。

 だから伝説でんせつとしてのこらない。

 あつかひとすくないしにするひとすくない。

 わたしなんとなく貴方あなた記憶きおくからかったけど、武器ぶきとしてはマイナーね。

 そもそもわたしだって伝承でんしょうでしからなかったんだし……。」

 

 「そうだろうねぇ。」

 

 サァ……、と部屋へやかりがんでくる。

 

 「今日きょうはリーフェにこわおもいをさせちゃったな、ごめん。」

 

 「いーえー? たのしかったわよ?

 ひさしぶりにこころおどっちゃった。」

 

 「そう?」

 

 「えぇ。

 また明日あしたってるわ。」

 

 「ありがとう!」

 

 周囲しゅういしろいっぱいになり、める。

 

 めずらしくゆめおこってしまった。

 

 今日きょうゆめ面白おもしろかったからスマホにメモしておこっと……。

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