あか・ほん~赤崎元の本気~
金子ふみよ
第1章 その1
草木も眠る丑三つ時。動物はおろか、植物さえとっくに眠っているというのに、跋扈するのは幽霊や妖怪くらいなもので、かと言って俺はそんな化け物でもなければ、なった覚えもない。
ただ。物陰に隠れ、俺をサンドウィッチにしている、
「何呆けてんだあ」
山吹色の束帯姿、腰には煌びやかな装飾を施した鞘に収まった刀剣を忍ばせ、紅のアイシャドウや、といったいかにも傾いた格好や、
「しゃんとしなさいよ」
体の周辺に水蒸気ならまだしも、雪を漂わせならが、肩をはだけ、合わせているはずの前がすっかりゆるんでいる小袖姿は、そうした類に数えて間違いない。この両名、
「分かってますよ。室長、冬雪先生」
我が恩師である。俺が通う塾のまぎれもない講師である。昨今は大人もコスプレする時代ではあるが、これがそうした趣向ではないのは俺自身がよく分かっている。
彼らが人間界をのさばるようになった理由は、神が死んでしまったせいかなんて、そうそう長寿でない俺が知る訳もないが、現状は愚痴っている場合ではない。何せ、狩場に同行しているのだから。ただし、何を狩るかが問題であり、お相手に顎を外すくらいの驚きを隠せない。センター方程式のXの係数さえ腰を抜かすこと請け合いである。
というのも、俺達の目の前にいるのは、巨大な……。
と、その前になぜこうなっているのか、少しばかり回想にお付き合い願いたい。二月三日現在から一か月強前のことである。
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