フラワー・ハニー

@heart-choco

第1話

さくらの過去.........。


夏休みのある日の早朝

ガチャガチャッ、ドドドドドドドッ

「早く逃げろ!殺されるぞ」

兄は大声で叫び、さくらを叩き起した。その声を聞き、両親も起きてきた。

「何事だ!?」

父は兄に聞く。だが兄は

「話は後でする。今はとにかく家から逃げてくれ。」

あまりの焦り具合に訳が分からないまま、兄の言う通り家を出て少し離れた祖母の家へ行った。

そこで

「俺はターゲットになってしまった。殺されてしまう。」

と兄は言った。ヤクザ関係、闇金…いろんなことを考えたが、ここは田んぼが広がるような長閑な田舎だ。そんな話は滅多にない。

時間をかけながら兄はポツポツと話しはじめた。

「警察も政治家も医者も何もかも敵なのだ。俺はターゲットになった…。病院で薬を盛られたこともある。色んなところで色んな人が俺を監視し狙っている。.........。」

兄は現実では考えられないような事を言っている。ターゲット、監視されている感覚。これはもしかして精神疾患ではないか。さくらはそう感じた。考えてみれば、以前にも酔っ払ったときに俺は毒を盛られたことがあるから親より先に死んでしまうと話したり、車が傷つけられると言い自宅にカメラを2台設置したり思い当たる節はいくつかあった。もちろん毒を盛られたことも車を傷つけられたこともない。さくらは確信した。そして同時にここまでになっているのなら危険だと感じた。

平日の早朝だったため、また非現実的だったこともあり兄にそうなったらそれまでだからと話し自宅に戻った。両親は混乱しているようだった。当然だ。それこそ非現実的なことが起きているのだから。その後一時間が立っても兄は自宅に帰ってこなかった…。

さくらは両親に休暇を取るように伝え、兄を無理矢理でも病院に連れて行くことを提案した。両親はどうしようとそれしか言えなかった。幸いにもさくらは看護師をめざしていたため多少の知識はあった。そのためさくらがその後の動きを提案していった。

まずは保健師と警察官に相談。あまり知られていないが、保健所では相談や保護、病院への付き添いもしてくれる。そのためさくらは父を連れて保健所へ向かうことにした。すると、ピンポーンと音が鳴った。

玄関を開けるとそこには警察官。私はゾッとした。兄がなにかしたのかもしれないと。

すると警察官は、兄から自宅から知らない人の声が聞こえると通報があったと伝えてきた。両親はさらに困惑している。さくらは警察官に兄の状況を話した。警察官は敵と話しておいて警察官を呼ぶ、明らかに兄の中も矛盾だらけだ。警察官からも保健所へ行った方がいいと勧められ、保健所へむかった。

保健所で早朝の出来事に加え以前からのおかしな点を話した。相談の結果、保健師二人、警察官二人、両親、さくらの七人で兄を保護し病院に連れて行くことになった。しかし兄の行方がわからない。

警察に捜索してもらい、夕方になってやっと発見された。七人で兄の逃げ場をふさぎ、兄を精神科病院へ連れていき、そのまま医療保護入院をさせることになった。

さくらは冷静だった。とても冷静だった。しかし……。

さくらはまだ看護大学に入学したばかりだった。まだ若い。そんなさくらが本当に冷静にできるだろうか。それまで大好きだった兄のそんな姿を見て冷静でいられるだろうか。

さくらはずっと手に力を入れていた。

その夜、さくらは声をひそめて泣いていた。


このことはさくらの中で一緒消えないトラウマとなった。

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