第102話 風舞

ロードサイクルで快適に移動して目的地へと到着した。


「葵、またこの前のモンスターだ」

「ミルオコレオですね。それにあの小さいのはグレムリンのようです」

「グレムリンか。聞いた事はあるけど戦うのは初めてだな」

「そうですね。あのモンスターも本来はヨーロッパによく現れるモンスターのはずですが」


確かミルオコレオも同じ感じのことを言っていたな。

まあヨーロッパだろうが、アジアだろうがそれほど問題ではないなので気にせずモンスター退治に向かう。


「グレムリンを牽制しながら先にミルオコレオを倒そう」

「はい」


前回はかなり苦戦したが、以前戦った時とは大きく違うことがある。

遠薙さんの戦闘を見た事で『ウィンドカッター』の代わりに『風舞』を使えるようになっている。


「ちょこまか動くな!『ライトニング』」


グレムリンに向け雷を放ち、その場へと留め置いて俺はスキルを発動する。


『風舞』


ミルオコレオの周囲に風が集まりその身を刻む。

『風舞』のスキルは思っていた放出系のスキルでは無かった。

当初『ウィンドカッター』と同種の能力かと思ったが、手元から放たれる『ウィンドカッター』に対して『風舞』はモンスターの周囲から突然発生する。

どちらかというと『ライトニング』に近い中遠距離型の使い方のスキル。

ただ使用回数の上限が四回であるように威力は『ライトニング』を凌ぐ。

四方から風がミルオコレオを襲い、その頭部を切断する。

胴体部分はその硬い外殻のおかげで残っているが


「これで終わりです。『エクスプロージョン』」


すぐに葵が爆炎で内部から焼き払い消滅させる。


「凛くん、前回あれほど手を焼いたミルオコレオをほぼ一撃でしとめましたね。すごいです」

「いやすごいのは遠薙さんのスキルだけどね」

「私少しだけ遠薙さんが羨ましいです」

「羨ましい?」

「私の『ウィンドカッター』では役に立たなかったのに、遠薙さんの同じ風系のスキルが凛くんのお役に立ってるのが少し羨ましいです」


葵は一体何を言ってるんだろう。

『ウインドカッター』だって今まで十分に役立ってくれたし、そんなスキルひとつ程度比べるまでもない。


「葵! 葵は百倍いや千倍俺の助けになってくれているよ。確かに『風舞』は強力だけど、そういう事じゃないんだ! だからそんな風に思わないで」

「凛くん……」


確かにサバイバーの力を使いこなせるようになって俺の生活は変わった。

だけど心が満たされる事はなかった。

今の俺があるのは全て葵のおかげと言っても過言ではない。

葵がそんな風に思っているとは考えもしなかった。

葵との今の生活が快適すぎて当たり前になっていたのかもしれない。俺はいまだに自分の事で精一杯で葵のことまでフォローしきれていなかったのかもしれない。

少しでも恩を返していきたいと思っていたが、よく考えたら何もまだ返すことができていない。

この戦闘が終わったら、心を入れ替えて葵にもっと信頼してもらえるように頑張っていこうと思う

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